第8話 廊下
天の高くに鎮座する太陽が遥か遠く、地上にある学校を照らしていた。
真上に太陽がある為、廊下の大半が日陰になっていた。
その日陰の中に大きな円が1つ。
男子生徒の円が出来ていた。
円の中心の人物は誰だろうか……
そんな事を考えるが、もう答えは出ているようなものだった。
「あ、授業中何処に行ってたの?探したよ。」
円の中から予想通りの人間が出てきた。
探したとは授業中にキョロキョロ辺りを見渡したという意味だろうか。
そうだとしたらかなり不審者なわけだが……ま、僕は授業をサボっていたから人の事言えないが……
「いやーちょっと体調が悪かったから保健室に……」
取り敢えず、僕は嘘をつく事にした。
サボっていた事に深く言及され、大勢の男子生徒の注目を集め無い為だ。
「まぁ良いや!一緒にご飯食べよ!」
結局、嘘をついてもつかなくても男子生徒の注目を集める事になるようだった。
僕は、大きくブレスを取り、深く溜め息を吐いた。
肺が思いっきり縮む……
限界ギリギリまで吐き、やがて再びブレスを取った。
「断る。」
落ち着きを取り戻した僕は怒鳴らずに冷静にそう告げた。
ここで了承しても断っても、どっちにしろ男子生徒からの株は下がる。
だったら、断ったほうが幾分か僕にメリットがある。
そう考えた故の発言だった。
「えーなんで!?」
男子生徒からは『こんな奴と食べるより俺等と食べた方が数倍楽しいよ!』や『こいつ、あの楓原様の願いを断りやがった!』などの声が上がった。
まぁ、予想通りってところだ。
「ほら、他に願ってるお相手さんが居るだろ?そいつ等と食べろよ。」
僕は教室のドアに手をかけた。
刹那、ドンッという音と共に、僕は身動きが取れなくなっていた。
目の前に彼女……楓原神居の顔がある。
僕の頭は一瞬の出来事に混乱した。
いつもどこかに余裕を持っている僕が混乱したのだ。
数秒だ……状況を理解するのに数秒掛かった。
隣には彼女の手があり、僕は壁側に追いやられている。
つまり、つまり……僕は、今、『壁ドン』をされている。
僕は流石に焦った。
心拍数は上がるばかりで体中から汗が噴き出す。
こういうのって普通、男がするものなんじゃあないか?
いや、僕は一生しないが……
僕は焦ると、余計な事を考えてしまう癖がある。
それより、どうしようか……この状況を……
「逃さないから……」
聞き間違いだろうか……今、彼女は『逃さない』と言ったのか?
「昼ご飯一緒に食べるまで逃さないからッ!!」
僕は首肯した。
すると、彼女は僕を解放した。
「や、やった!!じゃあ、先に待ってるね!場所は……分かるよね。」
彼女はそう言い、廊下を走っていった。
こういう事をするのに慣れているのだろうかと一瞬考えたが、走る時、頬を赤らめているのが見えた。
僕は、深く息を吐きゆっくりと立ち上がった。
周囲には男子生徒が大勢、倒れていた。
尊死という奴だろうか……死んでは無さそうだが……
廊下は静まり返っていた。
昼時の為、皆昼食を食べに行っているのだ。
僕は少し、思考して、やがてこのままでも良いやという思考に至った。
僕は自分の昼食を教室から取り、廊下を歩き出した。
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