第6話 先生
先生の話は言う程面白く無かったがこの程度が丁度良いのだろう。
眠くならずにちょっと笑える、そんな絶妙な距離感を保つのは至難の業だ。
先生の前の職業は小説家だったりしたのだろうか……
最近、漫画家や小説家は変わった人が多いと聞くがそれは本当なのか……
無駄にカーペットが敷かれて綺麗な廊下を歩きながらそんな事を考える。
カーペットがあるお陰でシューズからモスキート音が鳴る事が無い所が唯一の良い所だ。
教室は五月蝿い……と僕は思う。
面白い授業や体育何かが終わった後は特に……
防音対策もしていない閉鎖的な空間な為、音が余計に反射して増幅しているのかも知れない。
これじゃあ一種の増幅装置である。
この考えはいつの時代も共通らしい。
これからの授業をまともに受ける必要性は皆無と言っていいほど無いが早退するのもな……
僕は音楽を受けに学校に来ている。
まぁ、その音楽の授業も無くなったんだが……
そう言えば、音楽の先生、確実に何かあるんだよな……ちょっと探りに行っても良いかも知れないな。
授業をサボったってあの人は怒らないだろう。
僕はそう信じて、教室を抜け出した。
あの人なら多分……
僕が向かった先はまたしても『屋上』だった。
今日は2回目だが、サボりと言えばここだ。
「あ、居た居た。先生!」
案の定、先生はタバコを片手に風に吹かれながら仕事をサボっていた。
僕は受動喫煙をしないように風上を上手く利用して先生に近づいた。
風は前に来た時より強くなっていた。
「えーと、確か君は音楽の人じゃあないか。」
ふむ、先生は単体と話す時は敬語を外すらしい。
これはあくまで推測だが、この先生は目上の人と単体で話す時も敬語を外してそうだな。
「先生なら生徒の名前ぐらい覚えて下さいよ。まぁ、僕は気にしないですけど……」
「そうか、じゃあミュージックマンと呼ばせてもらう。」
「それは、流石にやめて下さい。呼ぶなら……そうですね……変人とそう呼んで下さい。」
「ふむ……ピッタリな呼び名だな。ところで、変人は何をしに屋上に来たんだ?サボりか?それなら歓迎するが……」
「あ、先生に聞きたいことがあるんです。」
僕は早速本題に入ろうとしていた。
屋上の風で先生の長いか短いか分からない長さの髪がなびく。
小柄でヒョロヒョロな先生はすぐに吹き飛んでしまいそうだ。
先生はちゃんと朝昼晩の3食を食べているのか、と疑問に思う程の体つき……
僕はスポーツ万能って訳では無いがこの先生になら何にでも勝てそうだ。
「先生がさっき弾いていた曲は何ですか?」
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