第3話 学校

 入ってきたのは楓原神居だ。

クラス1の美人であり、頭の良さも普通ぐらいで男子達には理想の女子だ。

クラスでは彼女のファンクラブが出来る程の人気を有している。

暫くして、再び喧騒が舞い戻ってきた。

音源は、彼女の方からだ。

既に彼女の周りには人だかりができており、その様子はまるでミツバチが作る蜂球ほうきゅうのようだ。

蜂球の中の気温は47度にも及ぶらしい……

彼女は熱殺されないだろうか……

そんな事を考えていると蜂球の中から彼女が出てきた。

そして、こっちに向かってくる。

周りにたかっていたミツバチ達は彼女を見つめている。


「何だ?何か用か?」


僕は彼女にそう問う。

クラスのほぼ全員がこちらを見てきている。

周りにはstretto(緊迫した)空気が流れている。

僕もその空気に触れ、少しばかり緊張感を持った。


「おはよう。変人!」


「おいおい、煽る為にわざわざ、こっちに来たのか?」


「名前知らないから……変人だから変人で良いかなって……」


「良くない。言っとくが僕から見たらお前等が変人だからな。宇宙人から見たら僕等が宇宙人みたいに。」


失礼にも程度があるだろ……

まぁ、僕が変人だと言う事は自覚しているが……

それでも、他人に言われるのは癪に触る。

僕にもプライドって物があるのだ。


「じゃあ、名前を教えてよ!」


「……それなら変人で良いよ。僕は変人だ。」


彼女にはファンクラブがあるからな……

あまり関わりを持つと後が怖い。

僕は合理的に考えてそう結論づけた。


「挨拶をするだけ何だったらあの人間の塊の中に帰ってくれないか?」


「そうそう、貴方に用があってきたんだった。」


「手短に頼む。」


「今日、私の家で一緒に勉強……」


僕は彼女の口を塞いだ。

周りからの視線がよりmartelé(鋭く)なる。


「ピアニッシッシモで喋れ。でなけりゃ僕が殺される。」


「えっ、何で?」


「何でも、だ!」


「分かった……今日、私の家で一緒に勉強しない?私、次のテストやばいの。」


僕は驚愕した。

理由は大した接点もない奴に一緒に勉強しないかと言われたからだ。


「僕は変人何だろう?変人に教わったらもっと悪くなるんじゃあないのか?」


「でも貴方、頭良いじゃん。」


「……何故、お前がそれを知っている……」


「私の情報収集能力を舐めないでよ。貴方が全教科90点以上取っているのは知ってるからね!」


流石はクラス1の人気者だな……

情報網が半端じゃあない。


「……仮に僕がお前に勉強を教えたとして僕になんのメリットがある?」


「来てくれないの……?」


彼女は少し泣きそうになりながら言った。

ここで泣かれたら間違いなくファンクラブのヘイトを買うだろう。

だったら、選択肢は1つしか無い。


「分かったよ。行ってやるよ。」

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