第2話 家
自転車のペダルを漕ぐ音をメロディーに風を切る伴奏が耳に伝わる。
森の木々が風に揺られる自然のドラムは人間には誰も再現出来ない。
僕の家は山の上、森の奥にある。
毎日の登下校が大変だが自然の出す音が毎日聞けるなら安い物だ。
僕はドアを開けて、家の中に入った。
一人暮らしの為、料理や洗濯等の家事は自分一人でやる。
早速、僕は荷物を置き、準備をしてキッチンで夕食作りに取り掛かった。
キッチンは清潔でホコリ1つ無い。
料理器具は綺麗に立てかけられており、かなり良い物ばかり揃っている。
中でも、包丁は―――僕が好きだと言うこともあって―――3本もある。
以前、この包丁を使って僕の家に入って来た愚かな泥棒を追い払った事がある。
包丁が赤く染まる事は無かったが怖いものだ……こんな山奥の家に来るなんて。
そんな事を考えていた時だった。
不意にインターフォンが鳴った。
無機質な高い音が耳に入る。
うむ……誰だろうか、こんな時間に……と言ってもまだ夕方だが……
配達物の可能性は無い。
僕は物を自分の目で見て買いたいタイプだ。
だとしたら何だろうか……
さっきまで考えていた為か不審者ではないかという考えが頭をよぎる。
しかし、不審者が律儀にインターフォンを鳴らすだろうか……うーん……
僕は考えても仕方が無いと思いドアを開けることにした。
家のドアには覗き穴が無い。
僕はこれを期に付けようかなと思った。
念の為、包丁を隠し持ち、ゆっくりドアを開ける。
そして、僕は肩をガックシと落とした。
ドアを開けた先に待っていたのは空気だったからだ。
ピンポンダッシュでもされたんだろう。
わざわざこんな山奥まで来て……余っ程の暇人だな。
僕は安堵し、料理に戻った。
翌朝、教室内はシンと静まり返っていた。
どうやら僕が一番乗りのようだ。
もうちょっとAndante(歩くような速さ)で来たら良かったな……
まぁ、一番乗りで不都合な事は無いが……
そんな事を考えていると、誰かが教室に入って来た。
ギリギリの一番乗りだったみたいだ。
だからどうしたという話だが……
僕が鞄を片付けていると、一人、また一人と教室に入って来た。
それはもう、Prestissimo(極めて速く)。
僕は騒がしくても―――音楽の邪魔さえしていなければ―――気にしないが、出来れば静かな方が良い。
そんな喧騒の中、新たに教室に入ってくる人物が居た。
そいつが入ってきた瞬間教室がフォルテピアノの如く静まり返った。
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