第4話 迷走🐎

 最初、ルナは瑠璃子の前に乗せてもらい馬場を1周した。


「今度は一人で乗ってみる?」


 瑠璃子がもう1頭の馬に乗っているときだった。

 それまでおとなしかった馬がルナを乗せたまま急に走り出した。


「うわ~、止まって、止まって、止まってよ~」


 馬を止めるときの方法を瑠璃子から教わっていたのに、ルナの頭の中は真っ白だった。


「瑠璃さん、その馬貸して」


 遼平は馬の横腹を蹴って走らせた。


「ルナ、兄ちゃんが行くから、もうちょっとの辛抱だ」


 ルナの背中に大声をぶつけた。


「うん」


 ルナのか細い頼りない返事が返ってきた。

 ルナは馬に必死にしがみ付いていて、落ちる心配はなさそうだった。


「ほら、横まで来たぞ」

「兄ちゃん」

「手綱を寄こせ」



 遼平がルナの馬の手綱を握ると急におとなしくなり、もとからそれほどスピードを出していたわけではなかったけれど、初めて一人で乗るルナにとって恐怖以外の何ものでもなかった。


「ルナ、ゆっくりこのまま戻ろう」

「うん」


 やはりか細いけど、安堵のこもった返事だった。


「遼平、ありがとう。私がもっと気を付けていたら良かったのに。ルナちゃん、怖い思いさせてごめんね」


 瑠璃子はルナを抱き締めた。


 畑から帰って来た一平が呑気な声を出した。


「何かあった?」

「あのね、お兄ちゃんがたちゅけて、あれ? たちけて、あれ?」

「ルナ、もういいよ。家に戻って温かいものでも飲もう」

「うん」

 

 これはいつもの元気なルナだった。


「ルナちゃん、大丈夫?」


 おっかなびっくり馬に乗るヨッシーが言った。

 ルナは大きく手を振り、


「ヨッシー頑張って」


 出来る限り大きな声を振り絞った。




 翌日も乗馬の練習の予定だったが、ルナが行かないと言い、道の駅にお土産探しに行くことになった。


「おれも馬はしばらくいいかな。買い物に付き合うよ」


 遼平は瑠璃子、ナオ、ルナの女性陣に同行することになった。




「あっ、お兄ちゃん、ソフトクリーム食べる?」

「ああ」


 ルナはソフトクリーム売り場に駆け寄った。


「すみません、ソフトクリーム4つください」


 がま口型のポシェットから1万円札を取り出した。


「ルナ、何でそんなに金持っているんだ?」、

「エへへ、はい、お兄ちゃん」


 最初のソフトクリームを遼平に手渡した。

 瑠璃子とナオにも手渡すと、


「あら、ありがとう」


 と言って、近くのベンチに座って食べ始めた。


「ルナ、どうしてそんなに気前がいいんだ?」

「瑠璃子さんが4人で分けなさいって、お小遣いくれたの」


 がま口を開けると、お釣りの中のお金を差し出した。


「はい、お兄ちゃんの分」












 


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