12🏠遼平の快進撃

オカン🐷

第1話 お茶とお花と☕💐

「ルナ、何やらかした」


  遼平が剣道場から帰るなり、ルナに嚙みつかんばかりだ。


「リョウ、お月謝持って行くの忘れたからママが頼んだんやけど、どないかした?」

「ママ、道場の門に屋根瓦がついているの。時代劇みたいですごいの。ルナ着物着て行けばよかった」

「わあ、ママも見たかったなあ」


 遼平は冷蔵庫から麦茶を出しながら怒りが収まらないといった様子。


「ルナ、門を入るとき何て言った?」

「えーっと、たのもー」

 

 プッ、ハハハッ。

 ナオの笑いは止まらなかった。


「それで先生、どうしはったの?」

「ナオに上がりなさいって言うから説教くらうかと思っていたら」

「思っていたら」


 ナオは涙を拭きながら、先を促した。


「奥でお茶をたててもらって和菓子を食って帰って来た」

「すごい苦いの」


 ルナは舌を出して、抹茶の苦さを思い出していた。


「そのあと、師匠の娘さんの浬先生が帰って来て、お花を生けてた。ルナの生け方が斬新だって、また来週いらっしゃいって言われてやんの」

「あっ、桔梗 浬先生。テレビなんかにも出ている新進気鋭の花道家やないの」




 次の週も、ルナは言われるままに勝常寺道場の門を潜った。


「たのもー」


 道場主は笑いを含みながら、


「お上がり」


 と優しく言った。

 ルナは玄関で靴を揃え、稽古場の横の廊下を静々と奥に進んだ。


 庭に面した2つ目の部屋の襖が開け放たれ、浬先生の前にたくさんの花が置かれていた。浬先生は今日も和服姿で美しかった。


「いらっしゃい。ルナちゃんの好きなように生けてみて」


 花器が置かれ、中には剣山が入っていた。

 母親のナオがアレルギーなので花はよくわからなかった。

 ススキをくるりと捩じって剣山に刺した。もう一本同じように刺すと出来上がり。


 ウフッ、うさぎさん。

 ルナは楽しそうに笑った。


「おお、可愛らしいお弟子さんだね」

「あら、フミヤ、帰ってたの」

「レポート書きあげたいから、しっばらく世話になるよ」


 すると、隣の部屋から道場主の声がした。


「お茶にしないか」


 ルナはお菓子、お菓子と手を叩きいそいそと立ち上がった。

 お抹茶茶碗の中を見てルナは微笑んだ。


「お祖父さん、ぼくにも一服お願いします」


 先ほどのフミヤがルナの隣に座った。

 ルナは抹茶茶碗をフミヤに差し出して中身を見せた。


「えっ、何飲んでいるの?」

「こちらのお嬢ちゃん、抹茶が苦いと言うもんでな、紅茶だよ。フミヤも飲むか?」






🏠桔梗 浬さん お名前をお借りしました。ありがとうございました。

作品『恋心』

https://kakuyomu.jp/works/16817330660071293292


 

🏠  @fumiya57さん お名前をお借りしました。ありがとうございます。

作品『日系3世と間違えられた』

https://kakuyomu.jp/works/16817330659296751062







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