虹色魔導師は目立ちたくない⑧
「マリス……やばいって!!レイ様怒ってるよ!!!」
「うちのマリスが無礼な態度で申し訳ございません!!良く言って聞かせておきますので!」
ジンに頭を抑えつけられ、強制的に頭を下げさせられる。
「まあ、いいわ。貴方のそのフワッとした態度は既に何度も見ているから。」
「ほら、許してくれただろ?」
「うるせぇ!てめぇは黙ってろ!!」
ジンが声を荒げる。
最近みんなプリプリしているなぁ。
「それより、魔道具がなんとかって聞こえたけれど何か買いに行く予定でもあるのかしら?」
「ああそうです、この後魔道具見に行こっかなって思ってまして。あ、ちょうどいいや、レイさんどっか魔道具売っててオススメの店ってありますか?」
せっかく会えたんだ、どうせ3人は魔道具の店なんてあまり知らないしレイさんに聞くのが一番手っ取り早い。
「それなら良いところがあるわ。私の知り合いがやってる店よ。一緒に行きましょう。」
「いえ、場所だけ教えてくれたら僕らだけで行け」
「ありがとうございます!!!一緒に行ってくれるのであれば心強いです!!」
ミアが大声で僕の言葉に被せるように発言する。
「あんたは黙っていなさい。」
ミアも怒ると結構怖いからな、ここは素直に従っておこう。
「そう。じゃあ食べ終わったら行きましょうか。」
レイを含めた4人で魔道具の店へと向かう。
僕は正直3人で行ったほうが目立たなくて良かったのにミアがそれを許してくれなかった。
「馬鹿なの?マリス。レイ様からのご好意を無駄にする気?少なくともボクらより上の立場なんだよ?」
「大丈夫だって。レイさんは優しいから、多分。」
聞こえていたのか前を歩くレイの耳がピクリと動く。
「そうね、優しいから貴方のその態度も許しているのよ。」
「はい、すいませんでした。」
顔は笑っているが目が笑っていなかったので、とりあえず謝っておく。
この人も怒らせたら怖そうだ。
歩く道中レイさんから話しかけられた。
話題は昨日の事についてだ。
「聞いたわマリス。貴方昨日フェイル様とロゼッタ様と知り合ったそうね?」
「まあ成り行きといいますか、僕としては知り合いたくなかったですが。」
「ちょっと……冗談でもそんな事を言うのは辞めて頂戴。周りに聞こえたらどうするのよ。」
みんなビクつきすぎだよ。
あのフェイルとロゼッタが無礼を罰するような輩に見える?
いや僕は見えないね。
そんなたかが男爵ごときに無駄な時間は使わないとみた。
「大丈夫ですよ、ロゼッタは良く知りませんけどフェイルはそんな事で怒るようなやつじゃないと思います。」
「そう、友達にでもなったのかしら?」
「そう言ってはいましたが、僕は認めていませんね。」
「いや、認めなさいよ!というかマリスがそんな事言える立場な訳ないでしょ!」
ミアはすぐ怒るなぁ。
「ま、まあいいわ。フェイル様は尊大な態度に見えるけど実際はとても優しい方よ。ロゼッタ様はまああの感じねいつも。」
「レイさんも話したことあるんですか?」
「伯爵家なら公爵主催のパーティに呼ばれることがあるの。その時に話す程度だけれど。」
噂の貴族パーティってやつだな。
僕には無縁のものだ。
そもそも呼ばれたって行くもんか。
そんな所に行ったら目立って仕方がない。
伯爵以上が集うパーティに男爵家の者が入ってみろ、それこそ腫れ物扱いだ。
「フェイル様と仲良くなったのであればいずれ貴方もパーティに呼ばれるわよ。多少の所作は覚えておいた方がいいと思うわ。」
なんだって?
撤回だ、フェイルと友達になるくらいならまあいいかと思っていたが、それなら話は違う。
友達になんてなれば目立つ生活が始まってしまうではないか。
「それにロゼッタ様に興味を持たれたのならそっちのパーティにも呼ばれるでしょうね。言っておくけど私にする態度は辞めておいたほうがいいわよ。周りが黙っていないから。」
なんて恐ろしいやつなんだ。
そもそもロゼッタと同じ教室になったのが運の尽きだったのか。
いや、考えるのはよそう。
もはや過ぎたこと。
これから上手く避けて生きていけばいいだけだ。
「さあ着いたわ、ここが私の知り合いがやってる店よ。」
いつの間にか目的地に着いていたらしい。
ドアを開けて入ると、棚という棚全てに所狭しと魔道具が置かれてある。
初めて魔道具店に入ったがなかなかこれは心躍る光景だ。
「あれ〜レイちゃん友達連れてきたの?珍しいねぇ?」
店の奥から気怠げに現れたのは魔女というに相応しい格好をした女性だった。
とんがり帽子に黒色のローブ。
妖艶な雰囲気を纏った大人の女性だ。
しかもとても美しい。
美女という言葉以外見当たらないくらいだ。
「久しぶりね、マリネさん。紹介するわこの人はマリネ・フォンディーヌ。四色魔導師兼魔道具職人よ。」
「はあい、貴方達。よろしくね。」
僕らに向けて手をヒラヒラさせて挨拶してくる。
「えええ!?フォンディーヌ!?それって!創造の魔女じゃないですか!」
ミアは珍しいものでも見たかのように興奮している。
「なにそれ?」
「ええ!?マリス知らないの!?ホントにアンタは常識知らずね!!」
「そうは言われても知らないものは知らない。ジン知ってる?」
「おお、知ってるぞ。創造の魔女、珍しい藍色の魔力を持っていてどんな魔道具も作り出すこの国最高峰の魔道具職人でありながら、実力は宮廷魔導師級。ってなんでお前が知らないんだ。」
みんな知ってる常識らしい。
どうやら僕には常識が欠けているようだ。
「で?友達連れてきてどうしたの?」
「この3人が魔道具が見たいって言ってたから貴方の所に連れてきたのよ。」
「あーお客さんってことね!いいよいいよ好きに見てって!」
マリネさんに促され各々見たい魔道具を手に取りだす。
僕はその中で1つ気になったものがあった。
「んー?それが気になるの?」
「はい、この腕輪ってどんな魔道具なんですか?」
「それは
なるほど、これは今後に役立つかもしれないな。
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