虹色魔導師は目立ちたくない④
ふふふ、どうだ。
これぞ目立たずそれなりに実力を示すにはもってこいの技、
なんとかして目立たず威力もそれなりでかつ馬鹿にされない程度の魔法を創った昔の自分を褒めてやりたい。
「断面が……こんなにツルツルに……。」
と思ったが試験官はゴーレムに近づき真っ二つにされた断面を手で触っている。
「おい、なんだよ今の魔法……。」
「見たことねぇよあんなの……。」
「聞いたこともない魔法名だったわね……。」
観覧席に耳をすませると聞こえてくる声。
良く見たのか?
三属性の魔法を使い、尚且つあまり派手ではない魔法を。
三色魔導師だという証明にもなったし、ド派手に爆発もしない。
素晴らしすぎて逆に目立ったか?
「マリス……オリジナル魔法なんて使ったら駄目じゃない……。」
「だよな、ミア。あれオリジナルだよな。俺見たことねぇもんあんな魔法。」
ジンとミアの声は聞き慣れているいるだけにふとマリスの耳に入ってくる。
何?オリジナル魔法は駄目なのか?
出来るだけ地味な魔法を創ったのに。
「マリス、これは君のオリジナル魔法か?」
「あ、はいそうです。」
「な、なるほど……。レオンハートの息子はやはり別格だったか……。」
良くわからない事を言われ観覧席に戻された。
戻る際に沢山の受験生から目を向けられたが、地味すぎてなんだこいつ?ってなっちゃったかもしれない。
「なんかめっちゃ見られてるんだけど。」
席に戻ってミアとジンに困ったポーズで話し掛けると、ジトッとした目付きで僕を見つめてきた。
「な、なんだよ。」
「いや、隠す気あるマリス?」
「当たり前だろ、目立つのは嫌いなんだから。」
「あほなのかテメーは!誰がオリジナル魔法を使えって言ったよ!」
「オリジナル魔法だけど、出来るだけ地味そうな魔法を創ったんだ。これなら目立たなくていいだろ?」
「馬鹿だなーマリスは。そもそもオリジナル魔法を創るって事自体、普通は出来ないからね。」
「何だって!そう、なのか……。」
「テメーさてはテレーズさんの魔法講義真面目に聞いてなかったな?」
ジンにそう言われなんとなくテレーズさんに講義を受けていた時を思い出す。
あれは確か12歳の時だったか?
――4年前――
「では、今日から魔法講義を始めます。私テレーズが教師を務めますので宜しくお願いしますねマリス君、ミアさん、ジン君。」
魔導師養成学校に入学するのは16歳になってからだが、ソレまでにある程度魔法の知識は付けておかねばならないらしい。
わざわざ僕らの為にテレーズさんが神殿魔導師の仕事の合間を縫って教えてくれる事となった。
「まず覚えておかないといけない事は個人個人により使える属性は違います。さらに魔力量が違うので覚える魔法も違ったものになってきます。」
「はい!せんせい!」
「ミアさん、どうぞ。」
「自分で魔法を創ることはできるんですか!」
「なるほど、オリジナル魔法ですね。結論からいうとできます。ただし類い稀なる才能がなければ創ることは難しいでしょう。ちなみに私は創れません。」
「俺いつか自分だけの魔法創るの夢なんだ!!」
「ジン君、それは素晴らしい事です、もしもオリジナル魔法を創れたら宮廷魔導師にスカウトされますよ。」
テレーズさんでも創れないなら僕らが創れるはずがないな。
――――
何か思い出してきた。
テレーズ子爵も難しい的な事言ってた気がするな。
となると、オリジナル魔法を創った時点で目立つ行為ということだ。
「んー困ったなぁ、目立ちたくないのに……。」
「いや、困ったのはこっちだよ!せっかくフォローしようと思ってもこれはフォローしきれないよ!」
さっきの魔法披露をもう一度やり直したいと後悔していると、急に辺りが騒がしくなった。
「ねえ、マリスあれ見て。」
ミアが指差す方向は広場の真ん中。
今まさに騒ぎの中心にいる者だ。
「また三色だ!」
「なんだよ今期はすげぇやつばっかりか!?」
「美しい……あの人の妹になりたい……。」
様々な声が上がっているが、まさかの知り合いだった。
「あーレイさんだ。あの人学園長のお孫さんだよ。」
「あ、そっか、マリスは昨日会ったって言ってたっけ。すっごい綺麗な人だね!」
「三色魔導師で伯爵令嬢で容姿端麗……神は三物を与えたのかっ!!!」
ジンは何故か悔しそうだが、放っておいていいだろう。
「流石は才女って言われるだけあるよな。魔力量も多いんだろうな。」
「いやいや、マリスより少ないでしょ……。」
まあそれはそうだろうけど。
でも表向きは僕も三色魔導師でいくつもりなんだ。
三色魔導師の中ではかなり魔力量が多いって意味だよ。
「あ、試験終わったみたいだぜ。ってこっち向かってきてないか?」
「嘘!なになに!マリスなんかやったの!?」
「なんでもかんでもやらかすと思ったら大間違いだぞ。僕は静かに生きていきたいんだ。」
レイはどんどん近付いて来ると僕の前で止まる。
「マリス、貴方にそのオリジナル魔法を教えたお祖父様が良くやったって言ってたわ。」
なるほど、オリジナル魔法を教えてもらった、ということにして僕が創ったと思わせない創戦か。
「そ、そうだったの!マリス!てっきりマリスが創ったのかと思っちゃったよ!(棒読み)」
「お、おおー!流石はグランバード伯爵様だな!!」
ジンとミアも察したのか上手く乗ってくれたようだ。
「おい、アイツがオリジナル魔法創った訳じゃ無さそうだな。」
「あーびっくりした。入学前からとんでもないのが現れたと思っちゃったじゃない。」
「いいなー!伯爵様直々にオリジナル魔法を教えてもらえるなんて!」
こちらの会話を盗み聞いていた他の生徒も上手く信じさせれたようだ。
レイ……流石だ。僕のミスを上手い具合に誤魔化してくれたみたいだな。
「ああ、そんなこと言ってたんですね。じゃあレイさん、伯爵様によろしく伝えておいてくれますか。」
「ええ、構わないわ。(この男はホントに……)」
「あ、でもレイさんに聞きたい事が出来た。」
「な、何かしら?」
「自分の属性じゃないのに魔法って創れるんですね。」
「「「…………………………。」」」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます