第3話 届かない

「ん…眩しいな。」


縁が目覚めると窓の外は、快晴であった。覚醒しきれていない頭で、祈との喧嘩を思い出す。


「はあ、久しぶりに大喧嘩っぽいのしたな…。…あれ、昨日、祈が篝の大会行きたくないって言って、口論みたいになって…結局、どうなったんだっけ…。」


記憶の曖昧さ、空を漂っているような感覚、妙に軽い身体、縁はいつもと違う自らに戸惑う。


「とにかく、祈に会わないとな…。仲直りもしたいしな。よく晴れてるし、散歩に誘うか。」


縁は、いつもの仲直りの方法を行う為に、祈を誘いに行こうと動いた瞬間、目の前が暗転した。


「あれ…?なんだ…?あ、祈。」


再び目覚めると、5歩先ぐらい前に祈がいた。縁は、祈へ歩み寄り、


「祈、見てよ、空を。今日は、こんなにも晴れてるよ。だから散歩でもしにいかない?仲直りがしたいんだ…。」


そう声をかけるが、祈は、縁を知らんぷりするかのようにしている。それも、見たことないような顔で…それも、目から止まらぬ涙を流しながら。


「祈、そんなに怒らせたなら謝るよ。ところでさっきからどうして祈はずっと泣いているの?」


手を重ね、泣いている祈に、縁は優しく声をかけるがやはり反応がなく、知らんぷりをされる。急に無視し始める祈に縁は、困惑した。


「まるで僕がいないみたいにさ、祈は、また、そうやって意地悪する。」


祈が照れ隠しで、縁がいないみたいな態度をとったことを思いだしながら、縁は、祈の重ねた手を握りしめる。けど、祈は縁に気づかない…。


縁は、徐々に昨日の記憶が蘇ってきた…。縁の足元にだんだんと深淵が広がり、その深淵が縁を侵食していく。


「祈、僕は昨日…祈…ねえ、祈ってば。」


縁の声は、祈に届かない。










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