第2話 縁と祈、たまに篝
いつものように、縁と祈が二人一緒に登校していると、後ろから
「縁〜、祈さんもおはよう!」
「篝、おはよう。今日は、サッカー部の朝練ないのか?」
「篝君、おはよう。私も縁と同じこと思ったよ。」
「なんだなんだ、二人とも。相変わらず、朝からすでに息ぴったりだな!今日は、週末大会だから、負荷を徐々に減らしてるから、朝練ないのさ。」
篝、180センチを越える身長、黒髪短髪、顔立ちは凛々しい。運動神経抜群で、サッカー部で、一年生から10番を背負うエースである。
性格は、温厚だがサッカーとなると熱い男になり、味方をサポートし、そしてチームを声とプレーで引っ張る。
そんな篝を縁と祈もサッカー部員も友達も、そして先生たちも、とても信頼している。
そんな篝だからこそ、縁と祈の二人の空間に、篝を招くことができ、篝の存在は、二人の確かな成長にも繋がった。
中学で篝と出会う前の二人は、他人に対して何も求めていなかった。ただ単に、二人で過ごすのが快適であり、周りを気にすることも関わる必要もなかった。
そんな二人に篝は、溶け込み、二人と周りを関わらせてくれた。篝が二人と周りを率先して、繋げたかったわけではなく、篝という存在に周りも二人も惹かれたのだ。
「二人とも、週末の大会は準決と決勝だから見にこいよ!せっかくだしさ。」
「いいよ。会場は、確か近くの運動場って前に話してたよね?祈、行こう?」
「週末の予定といったら、勉強ぐらいだし別にいいよ。」
「お、二人ともありがと!当日は、めっちゃ活躍するからな!」
二人が週末の大会に来てくれることが嬉しく、篝は満面の笑みを浮かべながら、活躍を誓っていた。
そんな風に、篝はよく二人を大会や練習試合に誘っていた。
祈は、はしゃぐことはないがいいプレーには一生懸命拍手する律儀な女の子なので、サッカー部員からの人気が高く、勝利の女神、といわれている。
縁は縁で、しっかり観戦応援をするので、部員たちからとても慕われている。
そうやって、篝は二人の世界を拡げていた。そして、篝は祈に叶わぬ恋心を抱いていた。縁との友情は、しっかりとある。だから、恋心を抑え、友人としての付き合いを続けていた。それができる器量や器用さも篝には、ある。
篝は、祈が困っていて、側に縁がいなければ助ける。
縁が困っていても助ける篝。篝が困っていれば二人は助けるお互い様な関係。
篝は、そんな関係がずっと続き、いつか祈では、ない人と…と思っていた。
そんな三人の関係が壊れるなんて、縁も祈も篝も…周りの人たちも思っていなかった。
週末になり、篝の試合を見に行く朝、縁の家に祈がきた。そこから、一緒に近くの運動場へ歩いて行く。
その途中、縁と祈は、何年かぶりにひどい喧嘩をしてしまった。
きっかけは、祈の「今日、篝君の試合見に行くの、止めない?」という一言だった。
理由は、と尋ねる縁に対して祈は、とにかく今日は嫌なんだとの一点張り。そんな祈の姿を過去に一度も見たことなかった縁だが、篝との約束してしまった以上、頑張って、と挨拶だけでも、しに行こうと思うと、祈に伝える。
できれば、祈がすぐにでも、お家で過ごすようにしたかったが週末二人が出かけると知っていた互いの両親は、少し遠出の買い物に行っていた。
だから、今の状態の祈を挨拶にしにいく間、一人で留守番をさせなければならない。
それは、とても不安である。だから、縁も初めて祈に対して強引な形で接し、近くの運動場まで連れて行くこととなってしまった。
「祈?ごめんな。けど、置いていけないし、篝には一言挨拶したいんだよ。」
「……」
縁の謝罪に、祈は黙ったまま。二人は、険悪な雰囲気のまま、運動場への道を再び歩きだした。
春にしては冷たい風が吹く、曇り空。それは、二人の心情を写したかのようだった。
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