第6話篠原ユカside
婚約は白紙。計画通りにならなかった
想定外のことが起こった。
こんな事態を想定すらしていなかった、といえば嘘になる。
実際にありえるかもしれない、とは考えた。
『鈴木家の倒産』
『鈴木家の没落』
これらは、“前”にあったこと。
だから“前”と同じになる可能性は考慮していたのに……。
私、篠原ユカには前世の記憶がある。
それは“前”の自分の記憶。
私、篠原ユカはごくごく普通の平凡な人生を送った。
正確にいうなら“高校と大学”は少し特殊だったのかもしれない。
ムチャクチャ条件の良い学校。
金持ちの学校なのに特待生に甘い。
勉強さえできれば全て免除。授業料・寮費。教科書代、制服代、学用品の全てがタダ。
生徒の大多数が金持ちのお坊ちゃまとお嬢さま。
当時は分らなかったけど、特待生組はいわば、偏差値上げ軍だった気がする。それでも頭の良いお坊ちゃまとお嬢さまはいた。一部のアホ坊ちゃんとアホ嬢ちゃんが足を引っ張っていただけ。
昔から地元では成金学校って有名だったからそれを払拭したかったのかもしれない。
同級生も面白い人たちが多かったから楽しかった。
もちろん、勉強も頑張ったけど。
ただ、一つだけ不可解なことがあった。
それが一年先輩の「早川陽向」。
この人、本当に頭が良い。
オール満点ってなに!?
生徒会メンバーで、学校の王子様的存在の鈴木晃司先輩と恋人関係。
学校中が知っているほど有名なカップルだった。
玉の輿だ!
早川先輩ほどじゃないけど、私だって結構いい線いっていると思う。
だから彼女の真似をしてみたんだけど、全然ダメだった。やっぱり二番煎じは無理かと諦めて大学卒業後は大手に就職して、そこで職場結婚した。
私が結婚して暫くすると、鈴木晃司先輩と早川陽向先輩が結婚。
世間でいう略奪婚だった。
二人が結婚した時、「とうとうやったか!」と別の意味で驚いたし、やり遂げた早川陽向先輩に敬意を心の中で送った。ま、すぐに二人は落ちぶれちゃったけど。
鈴木晃司先輩の離婚した奥さんが、これまた凄いところのお嬢様だった。
ただ金持っているところと違って本当の意味でのご令嬢。
世が世ならお姫さまだ。
しかもそのお姫さまの人脈がこれまた凄かったらしい。
なにがどうなったのか分からないけど鈴木グループはアッという間に傾いて、すわ倒産か!?というところまで追い込まれた。経営者が代わったお陰でなんとか持ちこたえたみたいだけど、あの時は本当に大騒ぎだった……マスコミと海外が。知らなかったけど、鈴木グループって海外をメインに仕事してたみたい。だから?ってわけじゃないけど、国内の中小企業からそっぽ向かれたら到底やっていけなかった。嘘みたいな話。テレビでいってたからどこまで本当かなんてわからない。話半分に聴いておいた方がいい。でもまぁ、海外でかなり騒がれていたからもしかすると本当かも?とは頭によぎった。
鈴木グループが経営難に陥った時、海外の企業がかなり潰れたみたい。
その後の二人は知らない。
話題にならなかったから興味がなかったし、世の中からフェードアウトしてしまったので当然、どうなったか分からない。
私は、というと……。
いたって変わらない平凡な毎日。
息子が生まれて、結婚して、孫ができて、いつの間にか悪化していたガン。
家族に見守られて死んだはずだった。
目が覚めたら、天国じゃなくて過去に戻っていたんだから驚くしかない。
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