第5話神林杏side
大学三年。
それは起こりました。
突然の婚約解消。
相手側からの申し出でした。
しかも代理人と名乗る男性から、その旨が伝えられたのです。
「この度は、大変申し訳ございません。誠に勝手ではございますが、ご息女との婚約を解消させて頂きたく――――」
一方的に告げられたのです。
「つきましては、慰謝料をお支払い致しますので、どうかお許し下さい」
――なんて勝手な! 私は当然、怒り心頭です。
しかし、相手の方が格上の会社。
とても敵うはずがありません。
それ以前に、何故、本人が直接説明しないのか。
鈴木家の両親すら謝罪に訪れないありさまです。
弁護士と代理人になる投げですか?
別の女性と婚約する。
そうですか。
ふざけてますね。
鈴木家は各方面への謝罪も弁護士と代理人に押し付けたようです。
呆れましたね。
父の知り合いの弁護士が力になってくれて、相場の五倍近い慰謝料を貰うことは出来ましたが、全く納得出来ません。
許せません。
ほぼ政略結婚といっても過言ではない婚約だったとはいえ、こうまで簡単に婚約を解消されるなんて。
はぁ……。
ため息しか出ませんね。
男女の愛はなくとも信頼関係は築けていると思っていたのに……。
まあ、終わったことは仕方ないです。
食べて飲んで愚痴って寝ましょう。
幸い、愚痴に付き合ってくれる友人たちが『婚約解消パーティー』をしてくれるそうですし。
ちょっと楽しみですね。
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