~三度目~
第1話記憶と違う日々1
記憶違いでしょうか?
今頃の時期にお父様から婚約のお話があったように思うのですが……。
両親から「婚約」の二文字は全く出てきませんでした。
やはり私の思い違いなのかもしれません。
なにぶん、遥か昔の、遠い遠い過去のお話です。
記憶に残る事すら脳が拒否したのかもしれません。そう考えれば納得できます。
私はこれ以上、深く考えるのは止めました。
更に時間は過ぎ、ついに私は大学に入学することになりました。
この時点で私に婚約者はいません。
もしかすると水面下で決まっていたのかもしれませんが、私には知らされることはありませんでした。
大学一年の秋、私の過去の汚点……今世ではなく、過去――――一度目と二度目――――の最初の夫だった鈴木晃司様が婚約されたという情報が入ってきました。
お相手は私より一つ年下のお嬢様で、お名前は
前世ではお会いしたことがありませんので、当然顔も知らない方ですが、私が大学一年生ということは彼女は高校三年生。どこの学校なのかは存じませんが、今はちょうど受験勉強に勤しんでいる時期でしょうに。
その後、パーティーなどの集まりに出席すると、鈴木晃司様と婚約者の彼女らしき方がいらっしゃることがわかりました。
私の場合、婚約者がいませんのでエスコート役は自然とお兄様になります。
婚約者の女性は、特別目立つような容姿ではありません。どちらかと言えば可愛い印象を受けます。
ふんわりとした感じの良いお嬢さんで、癒し系といった雰囲気の方です。
彼の愛した早川陽向さん。
彼女とは違ったタイプですが、大丈夫でしょうか?
聞いた話では、神林様は鈴木様とは別の学校。
前回、前々回といい、この頃には既に早川陽向さんとお付き合いしていたはずです。
その事をご存じなのでしょうか?
それとも私の時のように本人に知らされていない状況なのでしょうか?
気になって仕方がないのですが、流石に他人の事情には首を突っ込むわけにもいきません。
なにしろ、
私とて、いくら気になるとは言え、気軽に話しかけられるほど無神経ではありません。
なので、この時は何もせず、お二人の関係がどうなっていくのかを見守ることにしました。
心なしか、お兄様も鈴木家の動向に注目しているように見えました。
それから月日が流れ、三年後。
恐れていた通り、彼は神林様と婚約を解消されました。
これも噂ですが、なんでも鈴木様には想い人ができたそうです。
前と同様に『同じ学校に通う特待生』である女性が彼の心を射止め、交際が始まったとか。
私は何も言いませんでした。
もし何か言っていれば、彼らは婚約解消しなかったかもしれません。ですが、なんと言って説明すればいいのか分からなかったのも本当です。
結局、私は傍観者としての立場を貫くことにしました。
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