第4話大場社長side

「子供?」


「はい、そろそろ孫の顔が見たいと先日、お義母さんから言われたものですから」


 まだ結婚したばかりじゃないか。

 もっとも俺と彼女で子作りとは……作る以前の問題なんだが親はそこのところを理解してない。


 そもそも俺には既に「子供」がいる。

 そこそこ優秀な息子だ。跡取りはいるんだ。わざわざ『妻』に子供を産んで貰う必要はないし、そんな予定はなかった。というよりも、あの『妻』じゃ、俺がその気にならない。

 

「子供は必要ないだろう」


は必要ですよ?」


 普通はな。

 だが俺に“跡取り息子”はいる。認知だってしてるんだ。問題ない、とは残念ながら無理だ。『妻』に話していない事だからな。親でさえ知らせていない事を赤の他人の『妻』に話せるわけがない。


「とにかく、跡取りの問題は解決済みだ」


「わかりました」


 大人し過ぎる『妻』だ。

 従順過ぎる『妻』だ。


 の言う事に疑問を呈しないところを評価している。



 なにより、両親は『妻』を随分気に入っている。

 事ある毎に「佐保子さんが嫁いできてくれて良かったわ」「いいお嫁さんだ」と褒めている。息子の俺よりも可愛がっているんじゃないか?と思うくらいに。



 その後、『妻』は体外受精という形で二人の子供を出産した。










 結婚しても、『妻』に子供ができても、生活に支障はなかった。

 俺は「妻のいる家」以外にも「別宅」がある。そこに居ればいい。



「奥様、知らないの?」


「ん?」


「貴男と私の関係」


愛人にもなれない浮気相手。

 その一人が嗤いながら言った言葉。


「気付いてないだろ」


「え~~~?鈍い人なんだ」


更に嘲笑う女。

見た目が気に入っていたが頭がな……。

悪くはないがどうも軽率なところが最近目に付く。潮時か。


もっと気を配れば良かったのか。

それとも「本宅」に帰る日を増やしていれば良かったのか。

今考えてもどうすれば良かったのか分からない。


ただ、『妻』を侮っていた事が一番の敗因だろう。



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