第7話中島香織side

 やった!

 やったわ!


 恋人の彼が離婚した。

 それと同時に私と秀一の婚姻届を今日、提出する。


 これで名実ともに私と彼は正式な夫婦になれる。


 三十歳半ばの秀一は、長身でカッコイイ。営業部の係長で近々、課長に上がるという有望株。既婚者で幼稚園に通う息子がいるけど、そんなの全く気にしなかった。だって今まで付き合ってきた中で一番いい男なんだもの。欲しいと思って当然。結婚したいと思って何が悪いの?


「妊娠した」ってパパに話したら物凄く怒られた。

 でもやっぱり孫は可愛いのね。

 すぐに許してくれた。ママは元々私に甘いから全面的に味方してくれた。


 秀一は社内でも評判になるくらいの『イクメン』。

 だからって訳じゃないけど奥さんと離婚するのに少し渋ってたのよね。


 噂じゃあ、かなり出来るタイプの女性で、そこそこ美人らしいわ。

 私は会った事ないけど、昔、鈴木グループの営業部で働いてたみたい。秀一の元上司だったって。秀一と結婚して退職したらしいけど。それって秀一狙いだったんじゃない?彼よりも三歳年上の姉さん女房だっていうし。美人だって聞くけど、きっと誇張してるだけよ。絶対に私の方が女として上に決まってる!年齢だって私の方が若いし可愛いし、パパが重役だから出世だって約束されてる。


 陽向先輩専務夫人が「応援するわ」「相手を説得しにいくわ」って言ってくれて心強かった。



 でも、下手に出たのか悪かったのかな?

 奥さんから法外な慰謝料を請求された。

 まあ、それはパパが一括で払ってくれたから良かったんだけど、秀一の両親は結婚に反対してた。どうやら奥さんが秀一の両親を味方につけたみたい。どこまで卑怯な手を使うのよ?お陰で秀一が実の両親に勘当されちゃったじゃない!

 皆に祝ってもらいたかったのに!

 どこまでも邪魔してくるんだから!!







「親に縁を切られたのなら丁度いい」


 なんでだかパパは機嫌が良かった。


「何が良いの?」


「婿入りすればいい話しだ」


 どうやらパパは秀一を自分の派閥の後継者にするつもりらしい。そんなのどうでも良いんだけど……。



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