第3話安藤玲子side
アホな捨て台詞を言って出て行った秀一は二週間経っても戻ってこなかった。
家出……じゃないわね。十中八九、浮気相手のところに転がり込んでいるに違いないわ。
ただね。
それですんでいれば問題なかったのに……。
秀一が出て行ってからかかってくる無言電話。自宅に届く脅迫文の数々。証拠はないけど浮気相手かな?とは思っている。直接的な被害はないとはいえ、家には幼い息子もいるし、なにより……。
「秀一君を別れてあげてください!!」
この人が問題だった。
「また、いらっしゃったんですか」
「何度でも来ます。可愛い後輩のためですから!」
専務夫人、鈴木陽向。
まさか専務の奥方が自ら乗り込んでくるとは思わなかったわ。
「二人は愛し合っているんです!」
「はあ……」
「愛し合う二人を引き裂くなんてあんまりじゃないですか!!!」
「……」
あんまりなのは、貴女の行動だわ。
だってそうでしょう?
普通はしないわよ? 浮気相手の擁護なんて。それも一人で……。この人、かなり図太いわ。
「専務は奥様がこちらに来ているの事を御存知なんですか?」
「勿論よ!晃司も秀一君達の味方だもの!!」
鈴木グループの未来は暗い。
そう感じずにいられなかった。
しかも暇なのか、日参してくる。
「二人の愛は本物なの!分ってあげて!!」
と、玄関前で大声で叫ばれて変に注目浴びるから、仕方なく自宅に上げるようにしたんだけど。なんなのこの人?人様の迷惑を顧みない行動は流石は浮気女の先輩だと妙に納得した。聞けば、彼女自身も略奪婚。
本人曰く「最初に付き合っていたのは私の方なの!だから浮気じゃない!!本来の形に戻っただけ!!」だそうだ。
誰が聞いても浮気女の言い訳にしか聞こえなかった。
付き合ってたといってもその時既に婚約してたんだから、浮気だ。
結婚してから再会してよりが戻ったって、それ浮気。
いくら綺麗な言葉でまとめようとしたって浮気の末の略奪婚であることに変わりはない。
常識が通用しない相手とは会話自体が成り立たない。
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