第30話浅田理事長side
厳しい環境下にある伴侶の立場も状況も全く理解していない。
それが一番厄介だろう。
内にも外にも敵だらけ。
味方のいない状況だ。「もう頑張れない」「無理だ」という言葉を無視する……この場合、何も聞かなかった事にする結婚相手。
一般家庭に育った伴侶はこんな未来は予想したいなかった。
四面楚歌の環境で精神はボロボロだ。
それでも離婚を許されず、幸せな結婚生活を強要され続ける。
悪夢だろうに……。
親や親族の反対を押し切って結婚した手前、意地になっている奴らもいるのだろう。だが数名は本当に伴侶の最悪の状況を理解していなかった。鈍感なのか、それとも自分が幸せだから相手や周囲が見えていないのか。
救いや拠り所がない。それとなるべき伴侶が自分を守らないのだ。絶望的な状況で精神崩壊を起こしていてもおかしくない。近年でパートナーなしで参加している既婚者が恐らくそうなのだろう。秘かに伴侶を精神科やカウンセラーに通わせて治療を受けている可能性が高い。
…………無関係ではいられない。
何しろ「シンデレラストーリー」は浅成学園から始まっているのだ。
この学園に在籍していた以上は「知らなかった」ことにはならない。
それだけじゃない。
鈴木の元妻。
彼女の事も問題だった。
瑕疵一つない女性に対して俺達は……。
しかもだ。
鈴木の元妻は再婚している上に、子供まで誕生しているんだ。
このことを鈴木は知っているのか?
知っているのなら俺達がしたことは……。
冷や汗が止まらない。
もし知っていたら……どうなる? ……いや、知らない可能性だってある。今まで鈴木の口から元妻の話題は上った事がない。早川と結婚したからな。早川を気遣ってあえて話題にしないのかもしれないが。
だが、もしそうでなったら?
突如、襲ってきた罪悪感に押し潰されそうになる。
無意識に持っていた報告書を強く握り締めていた。
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