第29話浅田理事長side

 ひどい。

 学園内……いや、学生時代は祝福された恋人たち。

 妨害すらなく、多くの友人達に祝福された恋人たちは、大学卒業後、社会に出た。そうして数年で結婚する者、卒業と当時に結婚する者――――と非常に多い。


 それはいい。

 学園の卒業生同士の結婚だ。

 学園の理事長としては喜ばしい限りだ。


 ただ……。


 社会に出ればそこはもう学園時代とは違う。

 玉の輿に乗った者たち。


 当然、祝福してくれる者ばかりではない。


 親や親族の大反対を押し切って結婚した者たちが圧倒的に多かった。

 親が根負けしての結婚。

 当然、相手の家族と上手くいくはずがない。

 結婚してもなお、相手側の両親や親族から送り込まれてくる見合い話。

 何時まで経ってもよそ者扱い。

 その上、社交界だ。

 妻として夫の隣と共に出席したパーティー会場では、殆ど無視される。まあ、この場合、浅成学園の卒業生だからということもあるが、そんな事は彼ら彼女達は知らない。


 しかも世間が敵に回っているとなれば尚のこと。


 数ある学校の中でわざわざ浅成学園を選んだ。その理由は何処にあったのか。進学校は他にもある。浅成学園よりも良い学校は大勢ある。それでも浅成学校を選んだのは「玉の輿」または「逆玉」が目標だったのではないのかと。


 そんな訳がない。だが、世間と言うのはそういうものである。


 身分違いの恋。シンデレラストーリーを「物語のようだ」と好意的に捉えてくれる人達より、悪意を持って受け止め非難する人達の方が大勢を占めるものだ。

 理不尽だがそれも仕方がない。こればかりは自分の力で解決するしかないのだから。


 理解ある伴侶ならまだ良い。だが、そうでなければ?

 

 共に戦ってくれる伴侶。

 それは頼りがいがあるだろう。だが、何時まで戦えればいい?敵は大勢いる。自分達を理解してもらえるまで何十年も掛かるかもしれない。その年月に耐えられるか?どちらか一方が疲れ果ててしまうかもしれない。そうなると支えあうことができなくなる。


 その反対のケース。伴侶におんぶに抱っこの状態の夫婦も長続きしない。

 

 離婚している者は少ないのは愛情からじゃない。別れ話がこじれているからだ。別れて疎遠になるのはまだいい方だろう。この状況で結婚生活を円満に過ごしている方が奇跡だ。その奇跡も片方の犠牲の上で成り立っている。……いや、この場合は犠牲というのとは少し違うか。


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