第15話浅田理事長side
十年前――
「なんだって!? 生徒が襲われた!?」
「はい」
「それは確かなのか?」
「はい。女子学生に命の別状はないそうです」
「……そ、そうか。ああ、それは良かった。それで?犯人は捕まったのか?」
「はい。ただ、犯人は我が校の男子生徒です」
「な……んだと……?」
頭を鈍器で殴られたような衝撃に襲われる。
まさか、そんな事態が起きるとは予想もしていなかった。
被害者だけじゃなく、加害者までもが我が校の生徒だと!? 一体、どうなっているんだ!
俺が父親の後を継ぎ若くして理事長を務めている、私立
去年の学校説明会には多くの企業が営業に来ており、それを見て入学を決意した外部進学組も多くいるのだ。
だからこそ! そんな我が校に不祥事が起きるのは非常に良くない。
すぐに対応しなければ不味い!
「報道はまだされていないだろうな?」
「はい。学内で起こった事ですので」
「……なら大丈夫か……」
箝口令を敷けばどうにか対応できると心なしかホッとした。
「ですが、現場を目撃した生徒の口から保護者に知られるのは時間の問題かと」
「……そうだった」
彼の言葉を聞いてハッとする。動揺していて失念していたが、いつ周囲に知れ渡っても不思議ではなかったな……迂闊だった。だが不幸中の幸いと言うべきか、被害者の女子生徒の保護者とは既にコンタクトを取れているようだ。最初は酷く取り乱していたが今はかなり落ち着いているらしい。判断も学校側に任せると言っている。それについては安心した。生徒はまだ未成年だ。大事にはしたくないだろう。いや、そもそもどういう経緯で刺されたんだ?俺は事件の全貌を知らなすぎた。
被害者の女子生徒は、高校から通う特待生。
そして加害者の生徒も同じ特待生。ただし、加害者の方はスポーツの特待生だ。同じ特待生でも少々性質が違う。厳しい試験を受けて入ったエリートクラスの特待生は成績の上位キープは当然だ。スポーツの特待生もまた試合で結果を出さなければならない。質の高い指導を受けられる反面、スポーツの世界は別のベクトルで厳しい世界だ。そのせいか苛烈な指導を行っていると報告を受け始めていた矢先の事件で、学園としても頭の痛いところだ。
それにしてもいきなりナイフで切り付けてくるとは……正気の沙汰とは思えないな。
いや、元々頭に血が上りやすい生徒なのかもしれない。それで行き過ぎたのか?しかしナイフはまずいだろう!
「それで結局、何が原因だったんだ?クラスも違う生徒だ。接点らしいものがない」
「はぁ……それが」
校長は言いづらそうに目を泳がせている。何が問題なんだ?だんだん苛々してきた。早く結論を言え!こっちは急いでいるんだ!!
「驚かずに聞いてほしいのですが」
「さっさと話してくれ」
いちいち前置きがうるさいな!早く言えよ!!
「実は加害者の男子生徒が言うには――――……」
そうして話された内容に俺は開いた口が塞がらなかった。
衝撃なんて言葉では生ぬるかった。
これは荒れるぞ……。
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