第47話シオンside
パカッ。
お弁当の蓋を開けると中には色とりどりのおかずの盛り合わせ。愛情たっぷりのお弁当に妻の心遣いが感じられる。
うん、美味しい。
桃子の作る物は家庭教理が多い。
そこには別に高級食材を使っている訳ではない。ただ、四季折々の旬の食材を使う事が多いのが特徴だった。子供達には可愛らしいキャラ弁がメインだ。
すっかり胃袋を掴まれてしまったな。
義兄の話では元夫は彼女が料理をする事すら知らなかったらしい。それは今も前も同じようだ。
やれやれ。
あの男はとんだ大バカ野郎だ。
今回はそんな男と早く縁を切ったことで前よりも早く子供達に会えた。それだけは感謝してもいいか。鈴木家が没落した後、あの男が会社に居残った事は予想外だったが……。平社員に転落したんだ。プライドの高い奴からすれば耐えられないと踏んでいたが、思ったよりマシな男になったな。意外だ。その分、再婚相手とは微妙な関係だ。いや、微妙というか……現妻が自由人過ぎるせいだろう。今回は子供もいないようだしな。再婚相手は北海道で楽しそうに日々を過ごしている。あの様子じゃあ、
あの夫婦の犠牲になる人間が一人でも減るのは良い事だ。
本当に、僕の
彼女は二人の報復を願わなかった。寧ろ、没落した鈴木グループの心配すらしていた程だ。心配の矛先は元夫や義両親ではなく社員達だったが。
僕は妻の言葉を思い出していた。
『……そうね。今はあまり思い出す事もないかしら?こうなってしまったのは彼らの選んだ結果ですもの。鈴木家の次期当主、グループを背負って立つのだと教えられて育った彼が一体何処まで出来るのかは分からないけど、相当苦労する事は解るわ』
『彼女が北海道に残った事は意外だわ。まぁ、自分のお店が軌道に乗っている最中ですものね。それは仕方がないわ。遠距離の関係でも良好な夫婦関係を築いているところは幾らでもあるんですもの。二人は是非そうであって欲しいわ』
別れた夫とその浮気相手の幸せを願える妻。
「
僕なら、とてもではないがそんな事は思えない。
桃子が心配するから元鈴木グループを残しておいたんだ。奴らはそのことに感謝するべきだな。
一ヶ月後、家族で日本に行く。
義両親と義兄に会いに――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます