第15話大樹side
あの会場で無邪気に楽しんでいたのは極一握りの人間だけだ。会場を後にする招待客の殆どの顔に、疲労が濃く残っていた。
「あ~あ~、今日の式、ガッカリだった」
「ホントよね、まさか新郎の友人達が帰っちゃうなんて」
「御曹司とお近づきになれると思ったのに……」
「当てが外れちゃったわよね」
姉ちゃんの友達の愚痴がスゲェ。
類は友を呼ぶ、とは言うが……それにしたって……。ブチブチと文句を言う女達。皆、金持ちの若い男が来ると思って結婚式に参加していやがった。それなのに蓋を開けてみたら肝心の男達は式が終わると早々に退場してるんだ。愚痴りたくもなるか。
「それにしてもさぁ、
「え?」
「だってさぁ。私達、
「まぁね。本人はサークル仲間だからって言ってたけど、アレは嘘ね。大方、呼べる友達がいなかったんじゃない?結婚式に参加してもらえる程の。だらか私達に声かけて来た、ってところでしょ」
「あー、ありえそう。ま、私達も解って招待された側だけどね(笑)」
「金持ち男を捕まえるチャンスだもんね」
「言えてる!」
「こんな事なら式が始まる前に声かけるんだったな……。誰よ?披露宴でさり気なく話しかけようって言ったの?」
「しょうがないじゃん!如何にもって思われたら嫌でしょ?まるで男漁りに来たみたいじゃない!」
「そのせいでチャンスを棒に振ったんだよ?本末転倒だよ。惜しかった!」
姉ちゃんの友達の会話が耳に痛い。
確かに今日呼ばれた『姉の女友達』。俺ら家族の知らない連中ばかりだった。姉ちゃんは「大学の時の友達」とか言ってが……この分じゃ、どうなのか分かったもんじゃない。本当に友達なのか?と疑問が拭えなかったけど、案の定、親しくもない連中だったか……。
近くに新婦の家族や他の招待客がいるにも拘わらず、「新郎の友達目当てで参加した」と堂々と言える女達は強い。お目当ての男達がさっさと帰ったせいで、かなりご立腹だ。愚痴はまだまだ続いた。その愚痴が嫌でも聞こえてくる。周囲の反応など女達はお構いなしだった。気付いてさえいない。
「
「うん、まさか結婚するなんて思わなかった」
「そりゃそうだよ。だってあの二人、大学卒業して一度別れたんでしょ?」
「そうそう、鈴木グループの御曹司と高校時代から恋人だって事は知ってたけど、御曹司の方は婚約者がいるって専らの噂だったもんね」
「私の友達なんて御曹司がどっちを選ぶのか賭けの対象にしてた!」
「ああ〜、それね。大半が婚約者に賭けてた奴でしょ。賭けになってなかったよね」
「仕方ないじゃん!普通は婚約者を選ぶって!」
「別れた時は『それ見た事か』って皆で笑ったよね~」
女達は「うんうん」と頷きあっている。
どうやら彼女達は高校は別だったらしい。道理で。金持ち学校は幼稚園から大学まで一環のエスカレーターで、同じ学校に上がるから友達や幼馴染なんてすぐに見つかるし、別れたらすぐ噂が広がってしまう。ただ高校は一握りの優秀な者しか外部受験はできないものの大学はそこまで難しくはないからな。彼女達は大学からの外部入学だった。
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