第14話大樹side
姉ちゃんが金持学校を受験すると言い出したのは受験ギリギリの時期だった。俺でさえ知ってる有名な学校だ。なんでそんな学校に行きたがるのか理解できなかった。そもそも金はどうするんだ?私立だろう?
『特待生は学費も入学金も何もかも免除なの!』
原因はそれか……。
ある意味、納得の理由だった。
そうじゃなけりゃ、ケチの姉ちゃんが行くわけないか。
『それだけじゃないの!指定の制服や鞄も全部タダ!しかも制服が可愛いんだよね!!』
そう言えば有名ブランドの新作だったな。
『それに奨学金の額が凄いの!しかも返却しなくていいんだって!凄くない?学年五位から落ちなきゃ問題ないのよ!!俄然ヤル気がでるよね?絶対特待生になってやる!!』
……もうなにもツッコめねぇ。金持学校の奨学金もだが、この勉強漬けの生活で成績をキープしてることが何より凄いわ。俺には無理。絶対に普通の人間には無理だわ。姉ちゃんが毎日必死に勉強して、見事学年一位になって特待生になった時は家族皆で褒め称えたのも記憶に懐かしい。しかも宣言通りに奨学金を返したくないからと、特待生に留まって勉強に日々取り組んでいた。奨学金の金額を知った時は驚いたな。だって一年間の授業費・交通費全て賄えて更に生活費と遊興費にも事欠かない金額だったからだ。金持学校恐るべし。
後から知った事だが、姉ちゃんは最初公立の進学校を第一希望にしてた。それを取り下げてまで金持ち学校を選んだ。
担任が熱心に進めていたらしい。
その学校の特待生になれば金に困らないし、担任も教師としての実績が付く。学校側にも箔が付くし、まさにWINーWINの関係だったらしい。金持学校の特待生という肩書きは強いとか何とか。姉ちゃんの弟と知って「姉弟ともに特待生」と意気込んでいたが、底辺の成績だと知って悪態をつかれた時に口走ってやがったからな、あの野郎!
今思えば、あの時止めておくべきだったんだ。「姉ちゃんに金持学校の校風は全く合わな」「他に良い学校は沢山ある」と――
本当に今更だ。
もっと姉ちゃんの学校生活を聞いておくんだった。金持ち学校での学生時代の事を。そしたら……そうしてたら、俺は……。後悔が襲ってくるのを感じる。
当時はおかしいと思わなかった。
姉ちゃんは勉強ができるけど、ガリ勉って訳じゃない。いつも机にかじりつくような事はしない。受験の時や試験期間中くらいだ。休日は普通に友達と遊びに出かける。ただ、一緒に出かけるのは中学時代からの友達だけ。金持ち学校の友達と何処かに出かけるなんて事は一度もなかった。
一度、聞いたことがある。
高校の友達と遊ばないのか?って――――
その時の姉ちゃんは何ともいい難い顔をしてた。楽天家の姉には珍しい表情だったのを覚えてる。だけど、その時の返事が思い出せない……。
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