第13話大樹side

 今日は俺の姉ちゃんの結婚式だ。

 高級ホテルでの結婚式。一般庶民の俺達じゃ、到底無理な場所だ。


 姉ちゃん曰く、「ここ、晃司の家のホテルなの。お披露目も兼ねて、ここで挙式する事になったんだよ。良いでしょう」との事。


 何が良いのかサッパリ解らん。


 この三つ上の姉は頭は良いのにどこか抜けてる。変な処で馬鹿だ。しっかりしているのにドジっ子。楽天的と言えば聞こえは良いが要は考えが足りない。頭の悪い俺でさえ気づく事に気付かないんだから相当だ。


 だからだろうか?


 自分がだって自覚がない。

 それは義兄になる男も同じだった。


 義兄の友人席には誰も座ってない。

 なのに、義兄と姉は気にしてなさそうだ。馬鹿みたいに幸せそうに笑う姉を見てるとムカムカしてくる。笑ってる場合じゃねぇだろ!!自分達が昔の友達に縁を切られたってのに!!!



 はぁ~~……。

 多分、そんな事も解ってないんだろうな。

 ある意味、似た者同士の似合いの夫婦になるだろうさ。




「大樹兄ちゃん」


「ん?なんだ?」


「姉ちゃん、綺麗だね」


「……」


 末の弟は素直に姉の花嫁姿を喜んでいる。いや、末っ子だけじゃないか喜んでいるのは。


「馬子にも衣装、ってもんだね」


「それ姉ちゃんが聞けば怒るぞ?」


「もう!二人とも素直に綺麗だって言えばいいのに」


「いや、だってな?」


「ね~。まさか姉ちゃんが真っ先に結婚するなんてねぇ……」


「俺は姉貴よりも兄貴の方が先に結婚するとばかり思ってたぜ」


「え!?なんでさ!?」


「姉貴は結婚向きじゃないだろ?」


「? そうかな?」


「あー確かに。料理や掃除ができないからな」


「えー、今時そんなの気にしたら負けだよ」


 末っ子は「二人とも考えが古いよ」と笑う。更に「それにさ、姉ちゃんの相手は物凄いお金持ちなんでしょ?だったら家政婦さんか家事してくれるんじゃない?」と続けた。「それは確かに」と二人が納得する。


 そうだな。世間で姉は『玉の輿』と言われるんだろうな……。


 弟達は無邪気に笑っているが、俺は笑えねぇ。それは父さんも一緒だろう。結局、俺と父さんは弟達に姉の結婚理由を話さなかった。いずれ知るにしてもだ。問題の先延ばしに過ぎないと理解しても未成年の弟達に真相を伝える事はできなかった。三人がなんだかんだ言っても姉を慕っている事を知っていたからだ。


 はぁ~……なんでこんな事になっちまったんだ?十年前なら考えられなかった事だ。……いや、違う。今思えば、あの頃から兆候はあったんだ。



 やっぱり分岐点はだろうな。






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