第13話 造りもの
成田空港からだと2時間もしなかった
寝ないまま乗ったせいなのか
離陸の瞬間すら分からないままに
着陸の衝撃で目が覚めた
松山空港はごちゃごちゃしてないから
分かりやすくていいなって思う。
間違ってももうジェットスターだけは乗りたくないな
19時過ぎだというのに
空気がふわっと暖かかった
アオイは迎えに来るって言ってくれたけど
一度断ったらそれきりで
タクシーでホテルに向かった
タクシーの運転手はやたらと親切で
ホテルの目の前までキャリーを運んでくれた
アオイも来るかなとか思って
松山で一番綺麗なホテルでツインにしちゃって
無駄に広い部屋に入ってから
急に虚しくなって
あたし何やってんのかなみたいな
ほんとは全然好かれてないよななんて
少し前に一人で四国旅行をした時に
松山でノリで初めて入ったホストクラブで
今まで会った中で本当に美しい顔の男に出会った
それが、アオイ
まあホストだし、あたしは初回料金だったし
距離もあるからもう会わないと思ってたけど
誘われてセックスしたからか、職業柄か
マメに連絡をくれていた
アオイから
着いた?みたいな連絡が来て
無視したら何回も電話が来て
適当に知り合った松山の市議会議員とご飯行って
アオイからの連絡がすごくて
23時過ぎに電話に出て
ずっと連絡待ってた。すごい会いたい
って何回も言われたから結局お店行って
朝方に部屋に来て
そのまま一緒にご飯食べに行って
ホテル戻ってきてからセックス
前回もだけど謎にまた中出し
ダラダラしてたら眠っちゃって
起きたら夕方で
またセックスしてから
アオイはヘアセットに行くから出て行った
こんな時くらい休めばいいのに
一人で飲みに行こうかなって思ってたけど
なんか結構遅くなって
23時くらいにアオイとご飯に行ってから
結局同伴してお店
金落としてくれる女にら誰でもいいのかよ
そんな事を思った。べつにホストクラブは楽しくもないのだ
どこでも好きを連呼するアオイを
あたしは好きなのかどうかわからない
アオイの言葉の真意はわからない
気持ちが見えない
ただ顔がすごく良い。見てて飽きない
作り物として美しい
早くにお店を出て
ホテルの無駄にでかいお風呂に入って
朝方アオイが来てセックスして
愛してるって何度も何度も言われて
首を強く噛まれて跡がついて
昼過ぎに出かけて
夕方帰る時にアオイが泣いて
「ほんまに好きやけん。
こんなに誰かを好きになったの初めてやけん恥ずかしい。
エリカはずっと俺のでおってほしい。ずっと一緒に居たいし離れたくない。
こっちで俺と暮らそう?離れるなんて考えられん。ほんまにしんどい」
整った顔を崩して泣くアオイを見ても
あたしはもらい泣きをしなくて
そんなアオイを抱きしめて
あたしも愛してるって言った
また誰かの「愛してる」を
そんな奇跡みたいな嘘みたいな
魔法の言葉をもらった
でも今回のはどちらも嘘だろう
成田までの飛行機の中
あたしはアオイのことを考えていたけど
また寝てなかったせいか
着陸まで記憶がなかった
東京着いたらジュンに会うんだった
あたしはなんて残酷なんだ
でも
アオイとあたしは
一体どちらが残酷なんだろうか
作り物みたいな美しい生き物の
感情や言葉も作り物かもしれない
作り物だから美しいのだ、と
それはそれで良いと思った
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