第7話
流星が何を考えているのかは分からないけど、今日は素直に送ってもらうことにした。
他愛もない話をしながらマンションに行くと、私の部屋の前に誰かが立っていた。
少し癖のある茶色い髪。
背はスラッと高くて、アーモンドの目をした男の人…あれは……。
「コウ君?」
「あ!空ちょうど良かった!」
「えっと、コウ君、彼は同じ部署の」
「宮野です。清水さんを送り届けに来ました」
「そうだったんだね!ありがとう!!
俺は久石航(ヒサイシ コウ)。
空のお兄ちゃんで〜す」
「お兄さん??なんていたっけ?」
「中学から腐れ縁なのが久石青なんだけど、航君はそのお兄ちゃん。
私と青の面倒ずっと見てくれてるの」
「久石青のお兄さんとは…!
弟さん、あんなに大きな展示場で展覧会なんてすごいですね」
「はは、ありがとう。
本人は忘れてるけどね…」
「え?」
「あ、いや!それはそうと…
まだ9時前なのに送ってくれるなんてよほど心配なんだね〜」
航君はニヤニヤしながらそう言った。
絶対にからかってる。
「ええ。清水さんは社内で一番モテますから」
流星もなに食わぬ顔で笑った。
こいつもからかってるな??
「それはそうでしょうね。
お役目ご苦労さまでした。
空。青のことでちょっといい?」
「うん…」
ああ…分かってましたよ…。
航君がわざわさうちまで訪ねて来てくれて、青の話をするということはアイツがまたなにか迷惑をかけたということだ。
だいたいそう。
私があからさまに嫌な顔をすると、流星は不思議そうに見てきた。
「大丈夫。いつものことだから」
「?そっか」
「じゃあ宮野君、ここまでありがとう。
これからも空をよろしくね」
「はい。僕も同じ部署の人間なんで、なにかお困り事があればご相談ください」
流星は柔らかな笑みを浮かべた。
あーこれは営業スマイルというやつだな。
道理で社内がざわつくわけだ。
取引先にも印象が良さそう。これが彼の強みなんだろうなぁ。
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