第4話
「ん…」
朝の眩しい光で目が覚めた。
「あれ?私…」
昨日、バーに行ってからの記憶がない。
そして目の前にいたのは…
「おはよう」
爽やかな笑顔を浮かべるアイツだった。
「え?なんで??」
「清水さんが昨日酔って寝ちゃうから…
ここまで送り届けたんです」
「あれ?そうだったの…?ごめんなさい、私…」
「なーんて」
「きゃっ」
「それだけじゃ済まなかったけど」
「え?」
宮野君に押し倒され、心拍数が一気に上昇する。
そして…
「嘘でしょ……」
なんとなく服が乱れてる気がする…。
胸元のボタンがいくつか外れて、はだけていた。
「あれ?ほんとに覚えてない?」
「まさか………」
「空、お前さ
もっと飯食ったほうがいいよ。
細すぎじゃね?まあ胸はある方だけど」
そう言って胸を揉んできた。
バチン!!!
「ってえ!」
「いきなりなにしてんのこの変態!!」
「目の前にいい女がいたら手を出すのがマナーだろ?」
「ふざけんな!!ばかー!!!」
枕を思いっきり投げて、素早く服を整えた。
「で、いつまで知らないフリしてんの?」
「はあ?」
「空だろ?忘れるわけねえじゃん」
「ホントに…流星??」
「ああ。小3ぶりだな。
お前は忘れてたみたいだけど」
「名字が変わってたから…」
「親が離婚しちゃってさ」
「そうだったんだ…」
知らなかった。
いつそんなことがあったんだろう。
聞いたらなにか壊してしまいそうな気がして、ぐっと飲み込んだ。
「空、綺麗になったな」
「え…?」
流星が私の頭を撫でた。
思わぬ一言に、私の胸は高鳴った。
こんなにも簡単にドキドキするなんて、私っておかしいのかな。
子どもの頃みたいに、仲が良かった頃に戻りたいのに、どう接していいのか分からない。
「美人で仕事もできて完璧な空かぁ……」
流星は笑った。
だけどそれは冷たい笑顔だ。
少しだけ近づいたと思った彼との距離が一気に離れた感じがした。
「なにが…言いたいの??」
「空があんまり楽しそうだからさ、全部奪ってやろうと思って」
「!!」
「お前は忘れても俺は違う。
お前と最後に会ったあの日から全てが変わった。
だからお前の全部が嫌いなんだよ」
「流星…」
「これからも仲良くしような」
流星は笑った。
表情のない笑顔が私の胸に突き刺さった。
子どもの頃、最後に会ってから何があったのかは知らない。
だけど一つ言えることは・・・私の知っている流星は、もういない。
「空は俺のこと好き??」
「好きなわけないじゃん」
「じゃあ俺たち、両想いだな」
流星は嬉しそうに笑うと、気づけば私の目の前にいて・・・
唇と唇が触れ合う数秒間、私の頭は真っ白で、時が止まったかのように思えた。
流星とキスしてる・・・?
そして彼の舌が入ってきたところで、正気に戻った。
ガリッ
私は流星の舌に噛みついた。
「ってえ………」
「嫌いな相手にキスするなんて馬鹿なの?」
「嫌がらせのつもりだったのに欲求不満なの?」
「!!!
もう出てってよ!!馬鹿!!!!」
「ごちそうさまでした」
流星は満足そうに笑うと、荷物をまとめて部屋を後にした。
彼がいなくなって部屋は静まり返った。
ドクン、ドクン、と心臓が音を立てる。
まるで心の扉を叩かれているようだ。
その扉を開いてしまえば、私の日常は壊れてしまうだろう。
彼は自分が壊れてしまったからお前にも壊れろと言っているのかもしれない。
だけどね、流星。
私はずっと会いたかったんだよ。
今度会ったらごめんねって、本当の気持ちを伝えようと思ってたんだ。
だけどまた言えないまま終わってしまった。
涙が一筋頬を伝う。
目を閉じて思い浮かべるのは、あの夏の日のこと・・・。
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