第3話


何度想像したことだろう。


私のことなんて、もう覚えてないかな、って。


もしも奇跡が起きて…


次会えた時には伝えようと思ってたんだよ。


「おい空。りゅーせい君、じゃねえだろ。


流星だろ?」


「流星…」


何年ぶりにこの名前で呼んだだろう。





『流星!今日は三角公園だからね』


『お前誘ったんだから遅刻すんなよ!』



『空、国語の教科書貸してー』


『忘れすぎ!ったく仕方ないなー』



『これ新作じゃん!いいな〜!!』


『俺ん家でやろうぜ!!』


『じゃあ放課後遊びに行くから!』



『お前、あんな奴らにイジメられんなよ』


『だって、流星の悪口言ってた』


『別にいいじゃん。お前は俺じゃないんだからさ』


『でも悔しいじゃん。


友達のこと悪く言われてさ。腹立つよ』


『ハハハ!』


『なに笑ってるんだよー!』





小学生の頃の、色んな思い出がフラッシュバックした。


一番仲のいい男の子で、よく遊んだなあ。


可愛らしくて、黒髪が綺麗で、外で走り回ったり、一緒にゲームしたり・・・。


私の視界には、大好きだった黒髪と


あの頃よりずっと大きくなった流星の姿が…。


あれ?でもどうして…


「ねえ流星?」


「ん?」


流星が私を優しく抱きしめている。


彼の胸はとても心地が良かった。


「どうして?」


私がそう聞くと、彼は私の腕を引き寄せた。


そして…。


一瞬の出来事でよく分からなかった。


しばらく経って、それがキスだと理解した。


「どうしてキスするの?」


「どうしてだろうな」


彼の鋭い眼差しが私を捉えて離さない。


何度も何度も、角度を変えて私の唇を奪ってゆく。


「お前が嫌いだから?」


唇から伝わる温度とは裏腹に

その言葉が熱を冷ましていった。


あの夏の日、最後に交わした〝ダイキライ〟から


私は流星が分からなくなった。


私のことも分からなくなった。


何故か涙が出た。


なんの涙だろう?


自分が悲しんでいるのかさえ分からない。


流星はそんな私を見ると、満足そうに笑った。


その時、一気に酔いが回って、私は眠りに落ちた。




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