第23話 3拠点生活
迷宮都市ではまだ自前の拠点を設けられては居なかったけれど砦は引き払ってしまった。
砦も物資は持ち出したけれど生活空間にしていた場所は綺麗に片付いているので、戻ろうと思えばできる。
砦と父親の居る場所はそこまで離れて居ないという問題があるので、拠点を戻す気は無いけれど、そこまで居心地は悪くなかったし少し踏み入るだけで獲物が捕れる良い場所だった。山間部に囲まれた密林の中にある大きな露天風呂は結構魅力的なので、たまに出入りするぐらいは良いのではと思っている。
生活拠点は3か所だけど居心地の良い時間というのが違うため1日に何度も移動している。朝は一番清涼な空気をしている高原の家の周囲で鍛錬と瞑想をする事が多い。昼間には迷宮都市で探索業をしてギルドに品物を卸す。夜になったら観光の街で温泉に入るという生活のサイクルが出来て来たように思う。
偶然ではあるがこの3つの拠点は経度が大きく変わらない、南北一直線では無いし数時間は差があるけれどそこまで大きくないので影響は殆ど無い。
砦の拠点や父親の領地とは大きく時差がある。
前世で例えると父親の所が米文明の所で、僕たちが住んでいる場所が小麦文明の場所という感じだ。陸地の形や地形や配置が前世と全然違うので余り参考にはならないけれど。
ちなみにこの説明だとトウモロコシ文明の場所は別の陸地があったので探索中、バナナ文明の場所は米文明少しと被っているけど原種の産地は海の下かな。
母さん達はこの世界が丸い星の上にあって場所によっては時差があることを知らなかった。
最初は信じて貰え無かったけど、僕が千里眼で宇宙から見たこの星の光景を説明し、実際に時差がある場所を往復する事で信じてくれるようになった。
僕の見ている光景を母さん達にも見せてあげられたら説明が簡単なんだけど。
宿泊は一番ベッドが大きくベッドメイクもしてくれる迷宮都市の宿に泊る事が楽だけど階下に酒場があるため夜遅くまで騒がしい、温泉に入ってそのまますぐに寝られる観光の街も良いけれど若干潮風が入って来るので肌がベタつくし、宿泊施設や宿泊客を相手にしている酒場から騒ぐ酔客の声が遠くから聞こえて来たりするので完全な静寂ではない。静かなのは近隣の建物と距離が離れて居る高原の村の家だけど今の季節は寒いという欠点がある。
高原の村では時々村人がおすそ分けを持って来たり、子供たちが遊びに来たりする。
その際は観光の街や迷宮都市には行かない日になったりする。
フローラ母さんの友達が訪ねて来たという体でマリア母さんとリサ母さんが村に訪れていた。
宿泊する為に結構な頻度で居るのだが、家の近辺に居るだけだし昼前には移動するのでずっと居るとは思われて居ない。
一応家に出入りしている所を見られても平気なように、4人で村の散策は行ったので村人に顔は知られている。
観光の街で仕入れたこの辺では希少な魚介類の乾物や干物をお土産に配ったので大好評だった。
若く見えるマリア母さんとリサ母さんの来訪に、村人総出で歓迎会を開いてくれた。
実際にマリア母さんとリサ母さんは何人かのヤモメの男性達から求婚に近い告白も受けていた。
その中に先日フローラ母さんに求婚して玉砕した男性が居て村の未亡人の女性達に白い目で見られていた。
村長もマリア母さんとリサ母さんに村に定住しないかと言って来たけれど、事情があって定住出来ないと言って断っていた。
ブドウの収穫時期は手伝いに来たいと言ったら喜んでいた。
迷宮の探索は順調に進んでいる。
千里眼と瞬間移動を使うと最下層まで潜れてしまったのだけど、変に目立つのも嫌なので31階層までの依頼物だけど提出している。
迷宮には宝箱があるのでそれだけは全て拾った。
中身は迷宮で死んだ探索者の持ち物との事なのでそこまでの品は無いものが入っている事が多い。世界各地の迷宮は直接は繋がって居ないけれど、関係はあるらしく、遠い地の迷宮で亡くなった人も持ち物が違う迷宮の宝箱から見つかるらしい。剣や盾に刻まれた文様が、遠い遠い国の貴族のものだったなんて事が普通にあるらしいのだ。実際この辺では持っている人など見た事もないミスリル製の剣とオリハルコン製のナイフを殆ど立ち入らない深層付近にあった宝箱から見つけてしまった。魔法を付与すると淡く発光し切れ味があがる高価な品で、ここまでの品は父親の家から奪ってきた宝剣より純度が高い立派なものだった。紋章の様なものは刻まれて居たかったのでどこのものかは分からないが宝剣の類ではあると思う。
さすがに持ち歩くのは怖いので、砂漠地下の岩の中の行きとなった。その内それに恥じない有名な探索者になったら、それを持つのも良いかなと思った。ただ僕は魔力が使えないのでマリア母さんかリサ母さんが持った方が効果的だとは思う。
迷宮都市でも観光の街でも3人の母さんはナンパをされる事がある。
特にマリア母さんは観光の街では子連れという設定なのに、そんな事は関係なく声がかかる。
観光の街の宿に来ていた大商人の息子からかなり強めのアプローチがあった。かなり五月蠅かったので、しばらく訪れなくないようにしていたら街から居なくなっていた。
もう少し聞き分けが悪かったり強硬的な手段を使ってきたら制裁も考えたけれど、街から色々疑われる諸刃の剣なのであまり使いたくは無い。
母さん達はモテモテだけど、僕は誰にもモテてはいない。
高原の村でたまに遊びに来る7歳の子が一番近い関係だけど、あの子の本命は4歳の村長孫だしただ絡まれて居るだけだろ思う。
彼女は色々周囲の事が気になるお年頃らしく村中の大人に絡んでは質問を浴びせて居る。他の子と一緒に魔法の練習もしている事もあるけれど魔力が多くないらしく、それはあまり好きでは無いらしい。僕は魔法を使えない事が彼女の何かを触発するらしく、それが構って来る理由になっている気がしている。
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