第21話 観光の街の衛生管理

田舎の村の村長宅で1週間過ごしフローラ母さんがブドウ酒作りの手伝いに慣れ始めた頃に、観光の街の家の準備が終わったと連絡があった。しかしブドウ酒づくりが一段落つくまで僕とフローラ母さんはゆっくり過ごす事が出来なかった。

ブドウ酒の仕込みが終わった頃に観光の街でゆっくりする事が出来たけど、既に何度か温泉に入るだけのために訪れていた事もあって、目新しい事は無かった。ただ少しづつ砦からの荷物や新たに買われた家具などが並べられていったのでゆっくり出来る日を楽しみにしていた。


この街で新たに住む人は家の壁を白い漆喰で全て塗り直す事が義務付けられているらしい。

屋根のもこの辺で多く取られる赤土の煉瓦製と決まって居て景観に統一感を持たせている。一部の人を除き2階建以上は許されて居ない。許されても2階部分は1階の半分以下の広さに作る事しか許されて居ない。日当たりと風通しと立体感がある景観を守りそれが街の価値を高めている事を統治者は良く理解しているようだった。

赤い屋根と白い壁と緑の植栽と黒い火成岩の石畳の道路、変に統一感のある街並みと青い海の対比がとても綺麗だ。

海では遊覧船も出されていて沢山の観光客が乗っている様子がみえる。

夕方になると海と建物の白い壁が黄色に輝きとても綺麗なんだそうだ。遊覧船もそれを目的に夕方出港しそのまま篝火で照らされた街の情景や篝火を焚いて漁をする船を観察するナイトクルージングをするツアーがあるらしい。


マリア母さんが王都で申請した短期滞在申請の時に、一緒に説明を聞いていたけれど、様々な短期滞在申請の方法があるらしい。

観光客は国営の宿泊所に5泊以上する事を条件に最長10日の短期滞在申請でやってくるらしい。

他の滞在申請は1年毎の更新が必要な就労短期滞在申請。

街の中に物品を運搬する為の最長2日間の短期滞在申請。

旧村民の姻族を含めた血縁者の最長50日の短期滞在申請。

王都の役所の裁量権において許可される最長3日の短期滞在申請。

王族が発行する期間や条件の定めがない短期滞在申請。

マリア母さんは王都の役所の裁量権で街に入った。これは主に天候や災害や病気で街へ滞在を余儀なくされた人などに使われる。旅行での短期滞在申請でも良さそうだが、期間は短い代わりに国営の旅館への宿泊5日という縛りが無い。村民が経営する旅館に泊まったり、ビーチなどで野営したり、居住権を持つ人の家を間借りしたりと滞在方法の縛りが緩い。


家に引かれている温泉の廃湯たためておき、それを地下に掘られた下水にて汚物を海まで流す仕組みがあるとは聞いていたけれど、この湯量の多い源泉の場所から海までスムーズに下っていく坂道の街ならではのシステムだと分かる。

街の中心部を流れる川は名前もそのまま湯の川と呼ばれている。

下水道は非常に広く海に向かって何本も分岐し街を網羅し下っていく。

おかげで源泉の湯量は相当多いらしく、街の中心を流れる川は名前もそのまま湯の川と呼ばれている。

普段は下水路に厳選と川の水を流して汚物をスムーズに海まで流している。雨が降ると川から下水路に繋がる放水路の堰を締め下水路に雨水をながす。下水路は雨水をスムーズに海まで流す放水路の役割を子なしている訳だ。下水路は常に一定以上の排水か雨水が流れて居るので汚物が詰まる恐れは低い。

下水路の分岐の各所に設置された堰は水位によって開閉された適正な流量に調整される。

ちなみに堰を管理しているのは王家で、個人が勝手に堰に触ったら重い罰が言い渡されるらしい。

下水路はその何に相応しくなく汚物の量に比べ水量が多いため悪臭が殆ど無い。

下水路の近くを通っても温泉と潮風による匂いがあるのでそちらの方を強く感じるぐらいだ。

水量の点検をしつつ人が落ちないようにするため金属製の格子状の網、前世ではグレーチングと呼ばれる頑丈な蓋が置かれている。この蓋も無許可で開けたら重い罰則があるらしい。

これはふざけて蓋を開け下水路に落ちて流された子供を救うために蓋を開けたものにも重い罰が下だされた厳格なモノで、金貨を落としたぐらいで開けていたら割に合わないと言われるレベルらしい。


海に近い港の周囲が街の中心地ではあるが街を一望できるという意味では高台の方が優れている。王族の屋敷が源泉近く、つまり街の1番高い位置にある事もあり、国営の旅館や病院や美術館や図書館や観劇場やレストランなどお硬い施設は高台の方にある。逆に麓の方には動物園や娼館や賭博場や公園広場や遊泳場は麓の方にある。


湯の使用量は湯量が豊富なのか縛りが無かった。常時かけ流しみたいな使い方をしても注意も受けないらしい。インフラに関するお金は銀行の預け入れや国営企業の収益で賄われるているので税金は無いのも分かりやすい。


温泉宿泊施設が周囲にあるため、前世で見た浴衣に似た宿着を付けて家の前を歩いて居る人を良く見かける。

若い男女や家族連れなどの旅行者も多いけれど、湯治をする施設も近くにある事もあって、体が傷だらけの軍人ぽい人と、上品そうな高齢の夫婦が歩いて居るのを頻繁に見かける。


港では毎日朝市が開かれていて天候が荒れてなければ新鮮な海産物を手に入れる事が出来る。また交易船も頻繁に訪れるので珍しい品物が市場に並んでいる。

入港した船の人員は港の桟橋から外に出なければ短期滞在申請は要らないらしい。船乗りが短期滞在申請をすることは可能だけど殆ど通る事は無いらしい。みすぼらしい格好で体臭も酷い船員は金落ちが多い街には相応しく無いとの判断だ。大型豪華客船の船長と副長と首席航海士レベルで無いと通らないそうだ。

船員が街に入るには、大病か大怪我をするか、死ぬか、船が難破するか、犯罪で捕まる時ぐらいらしい。

桟橋には村人が船乗り相手の料理や酒などを販売に行っている。ただし港湾関係者や村人でも女性は桟橋に接近出来ない。街への疫病、特に性病に蔓延を防ぐため、濃厚な接触を行わせないためらしい。

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