第15話 3人の母親
みんなはフローラ従叔母さんの話を黙って聞いていた。
事情は知らなかったとはいえ、僕達はかなりの悲しさをフローラ従叔母さんに味あわせてしまっていたらしい。
脱出の準備をしていた時に、首輪を付けられ軟禁されている使用人が居る事にには気が付いていた。しかし自分たちが脱出する事ばかりを考えフローラ従叔母さんの事を気にしては居なかった。それに僕をイジメていた使用人たちへの腹いせのためにしていた現金の盗難が、フローラ従従妹をさらに間接的に追い込む1つになっていた。
マリア母さんはフローラ従叔母さんに僕の母親になって欲しいとお願いした。あとリサにも良ければ家族になるため母親になって欲しいと訴えた。
驚く事に2人はそれを了承した。リサは少し悩んだ顔をしたし、フローラ従叔母さんも驚いていたけれど、僕の母親になることを言ってきたのだった。
フローラ従叔母さんが了承するのはそこまで不思議では無かったけれど、リサが了承する理由は分からなかった。
僕がリサの顔を見ていたら、リサが僕に説明をしてくれた。
僕の事を大切に思っていること。買い物に行って親子のフリをするのはとても嬉しかったこと。それでも本当の家族では無いので少し遠慮していたこと。フローラ従叔母さんの話を聞いて焦ったこと。マリア母さんに僕の母親になって欲しいと言われて安心したこと。そんな事を伝えて来た。
照れ臭かったけど、僕は既にリサを家族だと思っていたし、母親になってくれる事は嬉しかった。フローラ従叔母さんの事は接点が少ないのでまだ少し抵抗を感じているけれど、マリア母さんがそうした方が良いと思ったという事はそれが正解なんだと思った。
フローラ従叔母さんが乳母だった時に、マリア母さんに何か思う所があるような出来事があったのかもしれない。僕はその辺の時の記憶については全くといって良いほど無いけれど、僕がマリア母さんとリサにフローラ従叔母さんの話をした時に、すぐに助ける事を了承されたのは何か理由があるように思った。
話し合いの後に風呂に入る事になった。
砦から明かりが外に漏れないように生活していたので、日が落ちてからは風呂には入りに行くことは今まで無かった、けれどこの日は夜だけど入る事になった。
超能力の視力を使わなくても月明りの明るい日だったため問題無く風呂場に行くことができた。マリア母さんがすぐに浴槽に水を張った、そして僕が熱変化でお湯に変えた。マリア母さんが魔法でお湯にした方が時間もかからず楽なのだけど、火魔法の光が漏れてしまうので僕が加熱する事になった。
ぽっかり空いた天井から満月に近い月が見えていた。
周辺の山々も月明りに照らされて陰影がはっきりしていて綺麗だった。
裸になったあとで体を軽く流してからみなで浴槽に漬かった。
フローラ母さんは裸になるのが少し恥ずかしそうだったけど、マリア母さんとリサ母さんが平然としている様子を見て気にしない事にしたらしかった。
フローラ母さんの体はかなりやせ細っていた。肌は青白く骨が浮き出ているし胸も小ぶりなのにハリが無かった。最近は手入れされて居なかったと思われる白髪は毛先が揃っておらずボサボサな感じ、後ろ姿は完全に老婆のようだ。顔は良く見るとそこまで高齢には見えないのに、全体的に暗いので同世代だったとは思えないぐらい年寄りに見えるのだ。
僕はフローラ母さんの両手取ると瞑想をして力を送った。
フローラ母さんから戸惑いの声が聞こえてくるけれど、瞑想に集中して居るので声の中身は頭に入って来なかった。
限界まで瞑想をして目をあけるとフローラ母さんは僕の顔を見てポーっとしていた。
痩せたままではあったけど心なしか肌にも若干ハリが戻っているように見える。
その後は体を交代で流して体をすすいだ後に風呂を出た。
念動力でお湯を遠くに捨てる僕を見てフローラ母さんはとても驚いていたけれど、これから何度も見る事になるので今だけだと思う。
その日は4つのベッドをくっつけてみんなで眠った。
時々僕を抱っこして寝るマリア母さんは遠慮して端っこに眠った。僕はリサ母さんとフローラ母さんに挟まれて眠った。
涼しくはなってきたけれど挟まれて眠るのは少し暑かった。だから部屋を熱変化で少しさました。
疲れていたのか最初に寝息を立てたのはマリア母さんで次にリサ母さんだった、昼寝していたフローラ母さんは寝付けなかったのか、僕が眠りにつくまでは僕の手を握り続けていた。
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