第16話 計画通り

フローラ母さんが砦の拠点に来てから1ケ月が過ぎた。

幾分かは肉はついてきたけれどまだまだ痩せ過ぎだと思う。なのでもっといっぱい食べて欲しいと思っている。


肌のハリが戻って来た事でそこまで老け顔には見えなくなってきてはいた。リサ母さんが髪を整えたおかげで後ろ姿も若返った。ツヤも出てきて輝いていて銀髪という感じになっている。

目の落ち窪みが無くなり唇もプックリしたので年相応には見える様になった。


フローラ母さんは食べることよりも飲む事が好きみたいだ。風呂のあとに母さん達3人は良くお酒を飲んで居るのだけれど、フローラ母さんが1番飲む量が多い。

マリア母さんやリサ母さんが食べ物をツマミながらゆっくりと同じペースで飲むのに対して、フローラ母さんは最初は塩煎りした豆をツマミながらゆっくりと飲んでいるのに顔が赤くなりだす頃から、何も食べず3倍ぐらいのハイペースで飲み出すのだ。

いつもはあまり表情を変えず口数も少ないのに、ニコニコしながら楽しそうに話して居るのだ。

その中には屋敷で起きた事などは一切言わない。ただ今日起きた出来事が楽しかったと繰り返して話すのだ。

最後は僕を探して膝の上に乗せて抱きしめながら幸せと呟いて眠ってしまうのだ。

急に力が抜けて体重がかかるので、後ろから抱きしめられて居るのに寝た瞬間はすぐにわかる。

フローラ母さんを念動力でベッドに運んでシーツをかけて、まだ飲んでいるマリア母さんとリサ母さんのもとに戻ると大体がマリア母さんが僕を抱き上げてベッドに連れて行き一緒に寝ようとする。

そうすると、リサ母さんがヤレヤレという顔をして片付けをするのが最近連続している気がする。

そして翌日はマリア母さんとフローラ母さんはその事を全く覚えて居ない。

リサ母さんに2人は大丈夫なのと聞いたら、こんな日がずっと続けばいいと言った。


定期的に屋敷の方を千里眼で見ているけれど、あまり詳細には見なくなっている。使用人たちの現金盗難事件は現金自体を家に置かなくする事で終息させていた。

盗難対策として銀行に預けたらしい。

その代わり宝飾品や美術工芸品など金目のものが消失する事件が起きはじめた。

本当にどこの少年の仕業なんだろうね。


父親の女とフローラ母さんの元旦那へはきっちりと制裁が与えられた。

父親の女はちょこちょこ部屋に居ない時を見計らい女が大事にしている宝飾品やドレスやバッグなど金目のものを根こそぎ奪った上で部屋を放火した。消火作業中に使用人をヒステリックに怒鳴りつけていたのでかなりイライラしたようだ。少年は腹違いの弟を連れて出ている時に放火したので感謝してくれてもいいと思うのに。


フローラ母さんの元旦那は不倫相手の家に転がり込んでいたけれど、2人とも仕事で留守にしている時に家にあった金目のものを全部奪ったあとに放火してやった。

元旦那はフローラ母さんの偽装死体に刺さったナイフの件で色々噂されていて白い目で見られていた。そして今度の不審火で発狂したようになり、女に当たり散らした事で破局となってしまっていた。

旦那も女も実家らしい家に戻ったみたいだけど、仕事中にも関わらず顔を合わせる度に口論しているので、上司らしい人に何度も注意を受けている様子が見られるようになっていた。


これは計算していたわけではないけれど、父親の方も連続する盗難と不審火のせいで不眠となっていた。

酒の量がとても増えていて、酔った勢いで女に当たり散らしている時もあった。女も育児と火事と盗難にストレスを感じていたために、激しい口論となって、カッとした父親が魔力を暴走させたせいで屋敷の一部が崩壊してしまっていた。死傷者も出ていたけれど屋敷に居たのは僕をイジメ続け、最後は毒殺しようとした奴らの仲間なので気の毒に思わなかった。

直したばかりの屋敷が壊れたことでさらにイライラしている父親を見ていい気味だと思う方が大きかった。

近くで事件が起き続けるので犯人が領外に潜伏していると思って居ないようだ。近隣の廃村、廃鉱、水車小屋、農具小屋などを調査している。廃屋の床につもった埃に足跡を付けたり引きずった跡を作ったり焚き火の跡を作ったのも効果的だったようだ。

捜索範囲は父親の元領外には及んで居ない。主な街道の関所を封鎖して居るので、大量の盗難品を持った犯人は出られないと思わわれているようなのだ。計画通りと前世で大人気だった漫画という文学作品の殺人ノートの所有者になった気持ちで言いたくなってしまった。、あれは死亡フラグだという知識もあるため打ち消しておいた。

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