第13話 従叔母さんの救出

ある日千里眼でフローラ従叔母さんを観察したところ、仕事中に倒れたようで同僚から介抱されていた。

その後仕事は休みを言い渡されたようで、自宅に戻っていった。付き添いはおらず徒歩で帰っていたので大事は無いのだろうけど何か不安だ。予知も警告を発しているので観察を続けた。

フローラ従叔母さんは自宅についてからも食事も着替えもせずそのままベッドに横になっておいた。

しばらく様子を見ていると、家の中に男性が入って来てベッドで寝ているフローラ従叔母さんを叱責していた、そしてフローラ従叔母さんの首元からかけていた鍵を奪うと、家にあった金庫を開けお金を取りだしそのまま家を出ていってしまった。

フローラ従叔母さんはそんな男に言い返す事も無く涙を流していた。


僕はマリア母さんとリサにフローラ従叔母さんの様子を伝え、今すぐ救出するべきだと訴えた。

マリア母さんの了解を得ると、僕はすぐにフローラ従叔母さんの家に瞬間移動してフローラ従叔母さんと共に砦に戻った。

混乱するフローラ従叔母さんのフォローはマリア母さんとリサに任せて、僕はフローラ従叔母さん脱出の証拠隠滅の作業をする事にした。あらかじめ準備していた工作用の荷物と共にフローラ従叔母さんの家に瞬間移動したのだった。


工作用の荷物はフローラ従叔母さん用の偽装死体と食用油だ。偽装死体は何かに使えるかもと残していた暗殺者の遺体で、食用油は放火用に使う予定で大量に購入していた。

暗殺者の死体は脱出完了後に全て処分する予定だったけれど、フローラ従叔母さんの様子を見て1体だけ残しておいたのだ。


僕はフローラ従叔母さんの家から食器と家具以外の荷物を集めると砦に戻った。

そして再度フローラ従叔母さんの家に飛ぶと偽装死体をベッドに寝かせ、偽装死体の胸に短剣を突き刺すと、食用油を家中にバラ撒いたあとで火を付けた。

家は煉瓦造りだったけれどかなりの勢いで燃えてくれた。


偽装死体に短剣を刺したのはちょっとした思い付きだ。最後に家に入った男とフローラ従叔母の関係は分からないけれど、ロクな男では無いと思った。だから強盗殺人犯と疑われてしまえと考えたのだ。


家への放火を終え砦に戻るとフローラ従叔母さんはマリア母さんに支えられながら食卓に座り涙を流していた。

食卓の上には消化の良いパン粥が置かれて居るので食べさせようとしていたのだろう。


僕はマリア母さんとリサに終わった事を伝えた。

フローラ従叔母さんにも僕が救出した経緯は話し終わっているみたいだ。偽装死体の事や家を放火した事は伝えていないと思う。

放心気味だったフローラ従叔母さんはずっと無言で涙を流していた。

マリア母さんはフローラ従叔母さんを支えながら背中を撫でていた。

リサは僕のパン粥も用意してくれたので一緒に食べた。屋敷から出る時に持ってきた柔らかい白いパンは平民の住む区域ではなかなか手に入らないので硬いパンをスープでふやかしたり、薄く切ってから炙るなど美味しくたべるために試行錯誤中なのだ。パン粥もその試行錯誤の中で作られたものの1つだ。早く自分でパンが焼ける窯がある拠点に移りたいというのがリサの願いの1つになっていた。人が居ることを察知されないよう、煙を出すような行為を控える必要があるので仕方ないのだ。


フローラ従叔母さんは僕の顔を見ながら良かったと呟てた。僕は元気になって欲しいからパン粥を食べて欲しいと伝えると頷きながらゆっくり食べ出した。痩せているフローラ従叔母さんにはパン粥を沢山食べて欲しかったけど1皿でお腹いっぱいらしく吐きそうになっていた。


マリア母さんが今は体を休めた方が良いと言い、フローラ従叔母さんをベッドに案内した。砦の拠点は殆ど崩れていて風雨が吹き込まない部家は僕たちがいる1部屋しかない、広く頑丈そうな部屋だけど同室になるのは我慢して貰うしかない。

これからいくらでも時間があるのでゆっくりと事情を伝えればいいと思う。

フローラ従叔母さんは疲れていたのか横になるとすぐに目を瞑ると静かな寝息を立て始めた。


千里眼でフローラ従叔母さんの家の方を見るとまだ燃えていたけれど消火作業は順調のようでいくつかの放火ポイントは既に鎮火していた。数人がまだ水魔法で消火作業をしているけれど、周囲には魔力切れしているらしい使用人が十数人座っているので魔力切れした人だろう。

座っている人の近くにはフローラ従叔母を叱責していた男がいたけれど、座っている人たちと口論気味にになっている感じがしたので何かひと悶着あったのかもしれない。

偽装死体を見るとしっかり黒焦げで外観から男女の判別は難しそうだった。胸に刺さったナイフは残っていたので、現場検証されたらその男が疑われるだろうと思った。

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