第7話 脱出の準備
6歳の誕生日が近づいてきた。
色々脱出の為の準備は進めており、ついには明日問題なければ脱出する事になっていた。
実は屋敷から食事が運ばれなくなったあたりから、何度か暗殺者が送り込まれて来た。
予知という力が目覚めた事で、何となく嫌な事がある日は違和感を感じるようになっていた。
夜になるとさらに違和感が強くなったのでその日はみんなで眠らず警戒していた。
透視を使って監視していたところ小屋に向こうから黒づくめの集団がやってきている事に気が付いた。
こんな夜更けに集団でやって来る連中は暗殺者か誘拐犯しかあり得ない。
僕はマリア母さんとリサに念話で状況を伝えた。
マリア母さんの指揮で、僕が念動力で黒づくめたちの体を少しだけ持ち上げた。身体能力が高くても地面を蹴れなってしまえば機動力は無いので獣を狩る時によく使っていた。黒ずくめ質が浮き上がった事をマリア母さんとリサに念話で伝えると、2人はすぐに小屋から飛び出し魔力を纏わせたナイフで始末していった。魔力を通しにくい鉄製のナイフだけど強い魔力を持った二人なら良く切れるものに出来てしまう。
身体強化で目に魔力を集中させると夜間でもある程度は物が見えるらしい。
僕も超能力を使えば暗さとか関係なく物を見る事が出来る。透視とは物を透かして見る力だったけど、千里眼と組み合わせたところ、見たいと思うものを選択できる事に気が付き暗闇でも問題無く活動できるようになった。
死体の首から血が噴き出すのが見えていたけれど、獣の血抜きと大して違わないと思った。
普段からリサが狩ってきた獲物の解体も手伝っていたので、生き物の死体には慣れていたし、さらにはこちらを殺しに来るような相手を同じ人間だと思えなかった。
僕は超能力をある程度使える様になったあたりから、マリア母さんと相談して屋敷に潜入するようになっていた。図書室で本を借り、調理場から調味料を拝借しに行くためだ。
その際に使用人の噂話から父親が俺達を屋敷から追い出したあたりで、準貴族の使用人の1人を妻の様に扱うようになり、その後男の子が産まれたそうだ。今ではその子を俺の代わりにするような事を言い出している事を聞いてしまった。
その子がきちんとした魔力を持っている事が分かればすぐにでも僕を排除するつもりらしい。
その際に抵抗する筈のマリア母さんやリサを何とかしないとと言って居たので、それを2人に相談したら急いで逃亡の準備をしなければという話になった。
赤ん坊はまだ1歳でつかまり立ちも出来て居ないし魔力の強さが分かるまでには1年はかかるとの事だ。だから僕が超能力の訓練をするのと並行で、マリア母さんとリサが野菜や獣肉の保存食を少しづつ溜めていくことになった。
屋敷の蔵書から保存食の作り方が乗った本を見つけてから、リサは保存食をかなり上手く作れるようになっていた。味見させて貰った時は、逃亡が待ち遠しく感じるようになったぐらいだ。最初はうろ覚えの知識だけで塩漬け肉や野菜の漬物を作っていたけれど、きちんと本の通りに作った燻製や酢漬けや砂糖漬けは比較にならない程美味しく出来るらしい。もっと早くにこの本を見つけて居ればと、みんなで後悔したぐらいだ。
爆発の首輪については屋敷の怪しい部屋を探索していた結果、隠し部屋に置かれている魔力装置と連動したものだと分かった。
瞬間移動を最初にした時に自分の体以外がその場に残されたので裸になってしまった。爆発の首輪も外れたのだけど、その際に爆発しなかった。
捕まえた虫や魚などで実験をして、自分以外でも瞬間移動させられる事を確認し、マリア母さんとリサの首輪を外すために瞬間移動させる事となった。しかし首輪は外れたけれど首輪はその場で爆発した。だから僕が付けたものだけ不良品だと思っていた。
しかしマニュアル本を読んだ事で、爆発の首輪は魔力装置と装着者の魔臓器と連動している装置だと分かった。爆発する条件は魔力装置から一定以上離れるか、装着者からの魔力供給が止まると爆発する仕組みにもなっているらしい。俺は魔力を持っていないので爆発の首輪の力が発揮できずに外れても爆発しなかったのだろうと予測できた。
首輪の破片は何かにつかえるかもしれないので取っておいた。
外した事がバレると面倒なのでマリア母さんが土魔法で作った似たような首輪をつけて生活するようにしていた。
瞬間移動で運べる荷物の量は荷馬車一台分を超える量になっていた。だから外に幾つかの仮拠点を作り必要なものを移動させている。
千里眼は隣領の貴族の領地まで見れるようになっていた。誰も使って居ない崩れかけている砦を見つけたので、そこを当面の隠れ家に使おうと保存食や日用品を入れた木箱をあらかじめ移動させておいた。屋敷からこっそり拝借したものも結構ある。
昨日は屋敷の宝物庫に侵入し中身をごっそり砦近くの廃坑跡に隠した。宝物庫は父親が鍵を管理しており殆ど人が出入りすることは無い。
今日は図書室の本を全て砦近くの廃村跡にあった穀物倉庫だったと思われる小屋に移動しておいた。司書をしている使用人の休暇の周期から本日は1日施錠される事を知っていたからだ。
万が一紛失に気付かれても屋敷に侵入したと思われない僕たちが疑われる恐れは少ない。小屋や周囲を探されても何も見つからないのだ。
寝静まる時間に脱出予定だが、借用書や契約書や公文書や周辺地図などの重要な文書と、図書室から持ち出されて居て運べなかった蔵書類は脱出の際になるべく持ち出す予定でいる。
特に領地に関する統計資料と他領や他国の調査資料などや、後ろ暗い資料は特に持ち出したいと思っている。マリア母さんの実家に関する資料がある事も確認していたのでそれは最低でも燃やしてでも父親のもとに残すつもりは無かった。
脱出する時に証拠隠滅と混乱を期待して屋敷の各所を放火するらしい。
以前から解体で得られる獣脂をため込んでいたのでそれを使って火を大きくするらしい。
獣脂は獣を解体する際に大量に出る。熱で溶かして絞って冷やしておけばかなり溜める事が出来る。臭いけれどランプの油として使えそうなぐらいの燃焼力があるのでバラまいて着火すれば簡単に火が回ってくれる。
人が良く出入りする場所のものは、少しづつ盗んだおかげで大事にはなっていない。
何故なら殆ど身内である屋敷では、使用人が多少のものを無断で持ち出す事が黙認されていた。保存食のために大量に塩を盗んだけれど、保存食を作るためにと過去に大量に持ち出される事があったそうで、今回も同様だと気にする人が居なかったみたいだ。
僕達が住んで居た小屋は最後に放火する計画になっている。
脱出の時間の直前に獣脂を柱や床などに塗りたくるので、木造の小屋はすぐに燃え広がり焼け落ちる筈だ。焼け跡に残すために俺たちの代わりになる死体も用意している。暗殺者の死体を氷漬けにしたものを何体か取っておいたので、爆発した首輪の破片と一緒に置いていくらしい。
男性の死体なので偽物だとバレてしまうかもしれないけれど、死体が無いのは変だし逃走の時間稼ぎが出来れば十分、暗殺者の死体の再利用しているだけだから体格が違うけれど、わざわざ死体を何処から用意する訳にもいかないので気にしないらしい。僕と同じ体格の暗殺者はさすがに居ないので、バラバラに砕いた獣の骨をそれらしくばら撒いておけばいいらしい。
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