第4話 屋敷を追い出された

気が付いたら俺は見た事も無い小屋で目を覚ました。

とはいっても目を開けても真っ暗で何も見えはしなかった。

首に違和感があって首輪のようなものが着けられている事は分かった。


僕の目が見えない事に気が付いたようで、マリア母さんとリサの泣く声がしばらく聞こえていた。

その後落ち着いたのかマリア母さんは今の状況について説明してくれた。

首に付けられたのは爆発の首輪という危険な魔道具で、マリア母さんとリサも付けられているそうだ。


食事に含まれていたのは強烈な毒薬だったらしく俺は椅子から崩れ落るように意識を失って痙攣たそうだ。呼吸も浅くなっていて今生きていることも奇跡に近いらしい。

マリア母さんは料理に何らかの薬が入っていた事に気が付いたので。何とか洗い流そうと懸命に水魔法と風魔法をコントロールし僕の食べたものを吐き出さながら呼吸を補助していたらしい。他の使用人たちは、僕を治療しているマリア母さんの邪魔をしようとしたけれど、リサが懸命に抵抗した事で治療を続ける事が出来たらしい。


なんとか僕の呼吸が回復し落ち着いた所で父親がやってきて、僕を庇うマリア母さんとリサに対し、爆発の首輪をつけたうえで屋敷から離れた小屋で暮らすなら、これ以上僕に手を下す事はないと言ったそうだ。二人はそれに了承して今に至るらしい。


この小屋は屋敷からは結構距離が離れて居て、元々は敷地内の狩猟用の森を管理しいた使用人のが建てた仮住まいの小屋らしい。

父親の住んで居る屋敷の敷地はとてつもなく広い、敷地内に狩猟や釣の為の森や湖が作られているし、使用人である準貴族達のための家も建っているからだ。

使用人とはいえ準貴族であるため家は一般人が住む家より立派なものだしプライバシーに配慮して距離が開けられている。

貴族の敷地の境界は高い壁で囲われているが、屋敷からはかなり遠くに見えた。

貴族の魔法は強すぎるため暴発する事で周囲に被害を与えないように、広い敷地が必要になるというのは後に知った。準貴族の家もそれが理由で家と家の間は離れて居るらしい。


僕は目が見えない事だけでなく手足にも力が入らないため起き上がれなかった。

マリア母さんとリサは小屋の中の整理と掃除を続けているようだけど、手伝う事が出来なかった。僕がお腹が空いたり喉が渇いたり便意を催すと、赤ん坊に戻ったかのように世話を子てくれた。

マリア母さんは貴族なのに魔力のコントロールが上手い。

部屋を水魔法で洗い流して風魔法で水気を吹き飛ばしたり土魔法で雨漏りや壁の穴を塞いだりしてていた。コントロールを失も無いようで破壊的な音は聞こえてこえなかった。

リサは身体強化を使い小屋に残された荷物の仕分けしているようだった。

床下の収納スペースに壺に入れ保管された大量の塩が見つかった。個人で消費できる量を超えているので保存食でも作っていたんだろうと予測していた。

前世と違いこの世界は食料保存の方法が限られている。肉を保存するには寒冷期に天日に干すか燻煙して乾燥させるか、茹でて中まで火を通した後に蝋に漬け込んで密封したり、保存性を高める塩やハーブなどに漬け込むぐらいしかない。だから塩があっても変だとは思わなかったようだ。


棚や木箱には工具や食器や狩猟道具や裁縫道具などの他は布や革などの素材も見つかったけど朽ちたり虫食いだったりして修理が必要だと言っていた。


屋敷から定期的に食事が運ばれて来たけれど、また毒が盛られる事を考えそれは食べなかった。

幸い小屋の近くには森や湖があるので獲物は得やすいらしい。

貴族だったマリア母さんや準貴族だったリサは、従軍のための訓練を受けた事があるそうで、そこである程度の野営の知識も得ていた。嗜みとしての狩の経験もあるそうなので何とかなるとの事だった。


リサは殆ど毎日森か湖に出かけ獲物を取ってきた。

マリア母さんは僕の面倒を見ながらリサが取って来た獲物を解体したり加工するようになった。加工するものが無い時は小屋の裏手を耕して畑を作っていた。

僕は早く魔法が使える様になりたいと思った。

魔力の循環さえ出来ればと思い、体の中を流れる何かを意識する事をずっと続けていた。

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