第2話
7月。季節は夏になり、連日うだるような暑さが続くもんだから私はクーラーの効いた涼しい部屋でのんびりする日々を送っていた。そんなある日私はむらちゃんからすみれが入院したと知らされた。話を聞くとどうやら夏休みが始まった数日後に体調を崩したようだ。私は不安になって「すみれは大丈夫なの?」と聞いた。
「今のところは安定しているらしい。本人にも確認取ってあるから明日にでもお見舞い行ったらどうだ」
「うん、そうする。ありがとむらちゃん」
翌日お母さんの車で病院へ向かった。病室にいくとベッドに体を預けたすみれが出迎えてくれた。
「雪!いらっしゃい。待ってたよ」
元気そうに笑うすみれに私はひとまず胸をなでおろす。
「すみれ、体調はどう?むらちゃんから電話がきた時は驚いたよ」
「今は安定してる。雪も暑いなか来てくれてありがとね。大変だったでしょ?お茶とかジュースとか冷やしてあるから飲んで。雪が来てくれるってお母さんに言ったら売店で買ってきたんだ。あ、あとプリンもあるよ。一緒に食べよ」
すみれがベットの横に設置されたミニ冷蔵庫からペットボトルのりんごジュースとプリン2個を取り出した。ゆるくおさげにしている髪が揺れる。今日も今日とてすみれがかわいい。
私は椅子に座ってりんごジュースを受け取るとゴクゴクっと飲んだ。りんごの甘酸っぱい酸味が喉を潤していく。
「そういえばさ、今回はなんで入院するほどに体調悪くなっちゃったの?最近落ち着いてたじゃん」
私がプリンを口に運びながらそう聞くとすみれはぴたっと動きを止めた。
「えっ。えぇ〜とぉ、そのぉ・・・」
すみれは気まずそうな顔をして、目を逸らす。
「何どうしたの。そんなに言いにくい?」
「そうじゃなくて・・・。うぅ。…実は、珍しく夏休みを元気に迎えられたからさ、めいっぱい楽しもうと思ったらちょっと、はしゃぎすぎたみたいなの」
「うん。・・・ん?え、待って。理由それだけ?」
「うっ。・・・そうです」
なんともまあ拍子抜けする理由だ。夏休みではしゃぐすみれの姿を想像すると吹き出しそうだったけど、我慢我慢。
「なんだ〜はしゃぎすぎただけかぁ!良かった良かった!」
「余計な心配させてごめんね。倒れた理由が羽目の外しすぎって恥ずかしくてどうしても言えなくて…」
すみれがクッションに顔を埋める。耳はまっかっかだ。
「大丈夫だって!夏休みは羽目をはずすもんだから気にしなくていいでしょ!」
「うぅ・・・そうかなぁ?」
私は笑いを堪えるのに必死になりながらすみれを励ました。
「じゃあ、このまま順調にいったら二学期も来れるかもね」
「うん。だといいな」
結局夏休みが終わってもすみれは学校に来ることはなかった。
私はそれからもほぼ毎日お見舞いに行った。最初のうちは元気だったすみれもだんだん横になっていることが多くなった。
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