第二章 聖シエール魔法学院課外学習編

第21話 女装学院での生活

☆☆☆課外学習一週間前


オリビーに女装がバレてから三週間経った。任務をこなしながら学院生活に馴染んでいく。


結局開かずの間は諦め、カノンが学院へ報告し、共和国の研究者達によって調査されることとなった。


結果はニコラス・ロストベルタの研究施設であった可能性が高いらしい。詳しい発表は未だされていないようだが……恐らく共和国は大きな秘密を握ったのだろう。


調べられなかった後悔はあるが仕方がない。そして一番は僕とオリビーは学院公認のカップルとなったことだ。


「きゃ~~~やはりあの二人いつ見ても素敵です……素晴らしく美しき歩幅ですね~~~!」


「ほら言ったことですか! 私達のラブレターが愛を繋いだのですよ~!」


「あぁとてもお似合いですね……お美しい~~~額縁に収めたいです~」


しかしこいつら、毎回僕達が登校している度に言っているけど飽きないのだろうか……


皆が女性のような見た目をしているが、この場にいるのは僕以外女装した男の娘だ。女性に近づけば近づくほど魔力が増すためである。


だからこのように華麗な制服を纏い、女性のような身なりをしているのだ。


そして僕が女性であるという疑問を一切持たないのもそのためだろう。


同性カップルとして受け入れられているのもこの学院ならではの風習だからだ。


何やらベストカップルだとか言われているが……それと僕のファンクラブが作られており、会員数が増えてるとか、ないとか知りたくもない。


クラスに辿り着くと……一人の生徒が僕達に気付く。


「御機嫌ようモキヤラブ様」


そしてこのモキヤラブこそが僕のファンクラブ創設者だ。


「御機嫌ようティア様! 今日のファンクラブ活動報告です! どうぞファンレターです!」


「あ、ありがとうございます」


山のようなファンレターを受け取る。今日もこんなに書いたのか……学院の連中は暇なのか?


「オリビーさんにもどうぞ! 最近オリビーさん人気半端ないのですよ! とてもお綺麗でティア様に一途なところが素晴らしいと! かくなるわたくしも」


「え、そうなの?」


「えぇ、お二人の関係があまりにお似合いすぎて、それで関係はどこまで進みましたか? キスはもう行ったのですか? もしくはそれ以上……」


「は、わわわわわわわ!?」


オリビーが取り乱す。もちろん、彼と恋愛関係になってからそのような接触は一切していない。手は繋いだことはある。


「いえ、僕達は清き関係を維持していくつもりですので、学院在住中は何もないですよ」


「そ、そうだよ……うん。何もないよ……はぁ……何もない……」


がっかりするなよ。気まずい空気を変えようとモキヤラブは話を振った。


「そういえば、もうすぐ課外学習が始まりますね。確かティア様達はラーリア様達と一緒の班になるとか……」


もうすぐ課外学習が始まる。


「はい。そうですね」


「やはり凄いです。あの二人と同じ班……頑張ってくださいね!」


こうして今日も僕の性別を偽った学院生活は始まるのだ。


☆☆☆ですわのお茶会


学院で行われている授業カリキュラムは全て頭に入っているので、聞き流しても大丈夫だ。やがて、任務のことを考えていると授業は終わりを迎える。


すると。


「ですわ~~~ですわですわでっすわ~~~」


誰が来たのか一瞬で分かる挨拶だった。


「あ、『ザウルス』治ったんですねラーリア先輩」


「はい、おかげさまで……ですわが戻ってきましたわ~ですわ~ですわ~」


普段より多めのですわが感じられる。これが解放された『ですわ』なのだろう。


ちなみに何があったかと説明すると。ですわ禁止令を発令した翌日も、ラーリアは『ざますザウルス』を使い続けていた。


どうやら、根付いてしまったみたいで戻そうとしていたら。


『ですわザウルス』という。訳の分からない語尾になってしまった。しかしとても互換が良くラーリアは『ですわザウルス』から抜け出せなくなる。戻そうにも苦しみ続けた。


そんな日々が長く続いていき、学院中にも『ですわザウルス』が広まり、流行となってしまったのだ。


流石に危機を感じたラーリアはたゆまぬ訓練の結果。今日『ですわ』を取り戻すことが出来たのだ。


かなり苦労したらしいが、正直何があったとかどうでもいい。


ラーリアに招かれティータイムをしていた。


わたてくしにですわが戻ってきましたのですわ~~~」


「よかったですね! ラーリア様」


「ありがとうございます。オリビーさん。ティアさんもご協力ありがとうございますわ~~~」


「……ティエラリア様。お礼に私とデートなど如何でしょうか? 『二人きり』で」


「そうやって、私のティアちゃんを取ろうとしてもダメですよ。ロムリス先輩」


学院で過ごしていけば当然ラーリア達とも関わっていく。オリビーは二人と打ち解けるようになり、四人組で行動することが多くなっていった。


そしてロムリスとオリビーはライバル関係になっていた。僕にちょっかいを掛けてくるロムリスに対しオリビーは阻止している。


四人で行った特訓でもそれが生きており、オリビーとロムリスはバチバチである。最初はオリビーが負けてばかりでいたが、日に日に光属性魔法の使い方が成長していき戦えるようになっていった。


「……今度ティエラリア様を掛けた本気の決闘をしましょうか、オリビエ様」


「受けて立ちますよ……ロムリス先輩」


そしていつもの喧嘩が始まった。


「おーっほっほっほ、お二人は本当に仲が良い事ですわね。ロムにライバルが出てくるなんて思いもしませんでした。これもティアさんがいてくれたおかげですわ」


「どうも……」


「そういえば、私達の課外学習先が決まりましたわ」


そう言うとラーリアは机に資料を置く。


「私達の課外学習先は大規模粛清魔法『ファーストブレイク』の被爆地である『大都市エーネスト跡地』ですわ」


「「大都市エーネスト跡地!?」」

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