第22話 戦争の跡地
☆☆☆課外学習先
『大都市エーネスト跡地』その言葉に空気が重くなる。
「エーネスト跡地ってまさか……だってあそこは……立ち入り禁止区域ですよ?」
オリビーが驚いている。するとラーリアが口を開いた。
「今から七年前。帝国による大規模粛清魔法『ファーストブレイク』で共和国民二千人の犠牲者を出ましたわ。その中に私の兄も含まれています……」
『粛清魔法』とは帝国が開発した魔法であり、大勢の魔法師で同じ魔法を詠唱することにより威力を爆発的に高めることができるものだ。
その威力は帝国の想定を上回り、共和国の都市一つを吹き飛ばすほどとなった。それが七年前に起きた『ファーストブレイク』だ。共和国内で多くの死者を出している。
なるほど、ラーリアの兄はファーストブレイクに巻き込まれ死亡したのか、
「ラリー様……」
「……大丈夫ですわ。ロム。話を続けます……危険な場所ですが、そこにオリビーさんの光属性魔法が求められているということですわ」
「なるほど……オリビーちゃんの魔法が鍵なのですね」
「私ですか?」
オリビーは首をかしげる分かっていないみたいだ。
「えっとですね。オリビーちゃん。光属性魔法はどの属性に対して有利に働く魔法なのです。大規模粛清魔法『ファーストブレイク』はその後の魔法災害が大きく、複数の魔法による二次被害がもたらされています。ですから、エーネストは立ち入り禁止区域とされているのですよ」
「えっと……ティアちゃんの言うことだと、私の魔法ならその二次被害を防げるってこと?」
「簡単に言えばそうです。詳しく言えば、『ファーストブレイク』の魔法式構成は恐らく……(以下略)だからこそ、オリビーちゃんの使う光属性魔法はその魔法に対し……」
「「「……?」」」
三人は首をかしげていた。しまった。また喋りすぎた。
「失礼いたしました。とにかくオリビーちゃんの光属性魔法があれば大丈夫というわけですよ」
「でもちょっと怖いな……危険がある場所なんだよね……ティアちゃんが傷ついたら嫌だよ」
「お二人共安心してください。私がいれば安全ですよ(チラッ)」
ロムリスが言うと心強い。だが相変わらず僕のことを無駄に見つめている。
「ロムリス様……?」
「例え、魔法が飛んできたとしてもティエラリア様のことをお守りいたします。この身を滅ぼしても(チラッチラッ)」
「なんでそんなこと言うんですか! ずるいじゃないですか! 私もティアちゃんのこと守るから!」
「おーっほっほっほ。
「あ、ありがとうございます」
何を隠そうこの中で一番戦闘力がないのは僕だ。
ロムリスは言うまでもなく最強であり、ラーリアも四属性魔法師だ。
そしてオリビーも光属性魔法が使える。つまり、僕だけが一般の無属性魔法師だ。
一応は魔法の解析などで手助けができるつもりでいるが、いざ戦闘になれば僕が足を引っ張ることは間違いない。
「安心してください。お二人を守るのは上級生としての務めですわ!」
こうして僕達の課外学習先は大都市エーネスト跡地へと決まったのである。
☆☆☆セクハラ?
「オリビーちゃん。今の魔法をもう一回お願いします。今度は同時に威力を抑えて三つの的へ」
「分かった……『ライトニング・アロー!』」
闘技場にて日課の特訓をしていた。オリビーは光属性魔法の技術は日に日に発展していく。
しかし、驚異的な成長速度だな。所謂天才肌というのだろう。
「難しいなぁ……魔力制御。そんな同時にできないよ」
「そこに魔法を出現させて飛ばすのではなくて、飛ばす場所に出現させれば、飛ばす工程が無くなります」
「えっとこんな感じ? ……『ライトニング・アロー』できた!」
すると、オリビーの光属性魔法は的に出現した。光属性魔法のダメージは大きいので、出現して相手が触れるだけでも足止めに使える。
「そしてこれを上手くできれば……相手に回避させる隙を与えなくなりますね。目の前に魔法が突然出現するのですから」
「なるほど……これを使えば先輩に……」
「といっても、ロムリス様にやろうとしても、見切られますね。あの人は出現した魔法でなく魔法師の目を見て攻撃を躱していますから」
ロムリスとの戦闘訓練を見て思ったが、ロムリスはかなり直感が鋭い。だからこそ、魔法が出現するより先に回避しているのは、魔法師の目を見ているからだと仮説を立てた。
「え、じゃあどうすればロムリス先輩に勝てるの?」
「僕が考え得る限り無理ですね。う~ん……オリビーちゃんが勝てる方法……」
ロムリスを倒す方法があるにはあるが、オリビーは正々堂々戦うタイプだ。不意打ちに適していない。あくまで彼が言いたいのは実力で勝つ方法だ。
「そんなに私弱いの……光属性魔法使えるのに……」
「いえ、オリビーちゃんは決して弱くないですよ。むしろ、ロムリス様に勝てる魔法師自体が共和国内でいるかいないかぐらいですから」
「……ティアちゃんなら勝てそう。ハニートラップとか……っは! ごめん!」
そこでオリビーは僕が女性であることを思い出したのか顔を赤らめる。
「別に大丈夫ですよ。そういう話も」
「い、いや、でもティアちゃん……そういう話苦手かなって……(女の子だし)その、ね?」
なんで、オリビーの方が恥ずかしそうなんだよ。いや、異性にこういう話をするのは気まずいか……
「そうやって、変に緊張されると……僕の正体が疑われそうになりますから気を使わなくて大丈夫です……下ネタ大歓迎です!」
学院で生徒同士の下ネタが飛び交う時がある。生物学上は男子だと思うのであった。お手洗いの時に小便器でサイズを確認したりは日常茶飯事だ。
毎度僕がお手洗いへ訪れた時に小便器の前でスカートたくし上げている光景は恐怖である。
もちろん僕は個室しか使えないので巻き込まれない。あとオリビーも個室派らしい。
それとスカート捲りも頻繁に行われており、男子同士というのもあってか躊躇いがない。
当人たちの性欲を満たすためでもあり、下着を見られて興奮する者。下着を見て興奮する者の両方が存在する。
スカートを捲られて興奮したら負けのゲームも存在しているとか、ないとか……
男の娘にも性欲自体は存在しているため、女性がいない空間での発散は同じ生徒に行き着くのである。見た目自体は女性のためあまり問題視されていないようだ。
中には肉体的な関係へ発展することもあるらしい。どうしているのかは全く想像できないし、想像したくもない。
そんなものを考えるくらいなら新たな魔法式を練った方がマシだ。
僕に付いていない物の話はさっぱり分からないので、男女共通の下ネタはないのだろうか……
「……え、じゃあ、ティアちゃんもスカート捲りたいとか思ったことあるの?」
「ありませんね……ふふふ……」
ということはオリビーは考えていたのか。普通に男の子なんだな、ついにやりと笑ってしまう。
「あああああああああ! ごめん! 今の忘れてぇぇ!」
慌てふためくオリビーは見てて面白い。僕に引かれると思っているのか……別にこのくらいは男の娘なら普通だろう。
「オリビーちゃんは意外とむっつりですね……」
「ち、ちちち違うから! 別にティアちゃんでそういうこと考えているとか、そんな事実は一切ないから!」
「その言い方だと考えていたのですね。ボロが出ていますよ」
胸を触られた時のこと思い出しているか。手がずっと閉じたり開いたりしている。
「あ~~~聞こえない聞こえないから! 何も私は言っていないよ~!」
「そんなに胸っていいのですか?」
「そ、それはティアちゃんのだからだよ! 他の人だったら嬉しくない。大好きな人のだから嬉しいんだよ!」
『僕』だからか……
「取り合ず今日分かったことはオリビーちゃんはむっつりだということです。エロいですね」
「違うからぁぁぁ!」
こうして今日の特訓は終わった。
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