第15話 純粋な友情?
☆☆☆光属性魔法
「それではティエラリアさん。オリビエさん。ご機嫌ようでざますザウルス!」
「失礼いたします。ティエラリア様。オリビエ様……」
お茶会が終わり。ラーリアとロムリスとは別れる。
あとは寮に帰るだけだ。
「ティアちゃん予定がなければなんだけど、図書館にもう一度寄らないかな。あの本まだ読み終えていなくて……」
願ってもない申し出だ。昼は二人の罰ゲームを考えて調べられなかったことがある。
「はい。僕も読むべき本を探していましたので」
このまま学院の図書館に着くと僕は目当ての本を手に取る。
『聖シエール学院史』。何々……十七年前にこの学院は設立され……その時の講師が『ニコラス・ロストベルタ』。この場所で数年間講師を務めていたと……
しかし魔法研究没頭にするため講師を辞めた……か。
「う~ん。やっぱり光属性魔法については未解析なことが多いんだね……」
オリビーはニコラス・ロストベルタの著書を読んでいた。だけど、あの本に記述されている魔法理論を理解して読んでいるのだろうか……
「それは十年以上前の資料ですから、数年後には前提が変わったりするものですよ。この時未解析だったものも解析されていますから、例えば光属性魔法の魔力論とか……展開される魔法式、光魔力変換理論。これを総じてロストベルタ理論と呼び、十年前の魔法研究に革命を起こした……それで(以下略)」
あ、また猛烈に語ってしまった……
「ヒカリマホウムズカシイ……エネルギー……カクメイ……セカイハヘイワ……」
オリビーは宇宙に目覚めていた。
「失礼いたしました。オリビーちゃん……」
「……っは! ごめん。何かに目覚めようとしていたかも……でも、ティアちゃんはほんと魔法に詳しいんだね……もしかして、これに書いてあること全て暗記していたりするのかな」
オリビーは冗談風に言っているが……冗談でもなく全部暗記しているのである。
「もちろんです。十四ページは光属性魔法実用編で……(以下略)」
とりあえずページを全部口にした。
「……ス、スゴイ。こんな難しい本を全て丸暗記だなんて……天才なの?」
少し嬉しかったりもするが浮かれてはいけない。
「……それよりもオリビーちゃんは光属性魔法のコントロールが上手ですよね」
決闘を見ていたが、オリビーの魔力制御はかなり上手い部類に入る。とても素人とは思えない。
「なんだろうね、凄く手に馴染むんだよね。まるで身体の一部みたいに動かせるんだ『ホーリーライト』」
すると、オリビーは光魔法を周囲に巡らせる。赤だったり青だったり、無数の色が輝き続ける。
「だからこうやって自由自在に色を変えることだってできるし、もっと強く光らすこともできるんだ」
言われながら何度も綺麗に色を変えている。素直に感心した。本当に魔法の素人なのだろうか……
「凄いですね……とても綺麗です」
「ティアちゃんには負けるよ」
「え?」
「この光は私の意志で照らしていて作られたものだから。でも君は意思と関係なく世界に生まれた奇跡なんだ。自然こそ美しいんだよ!」
「あ、ありがとうございます……オリビーちゃん」
何を言っているんだこの人。とりあえず礼を言ってごまかそう。一応君の中で僕は同姓なんだぞ。こういうのは異性を落とすときに言う常套句だろうに……
「うん……だからこれからもずっと、私の友達でいてほしい。ティアちゃん」
この世界でこうも他人を信じる馬鹿がいるとは……だけど、ここまで素直に信頼されていると、騙していることに罪悪感が生まれてくる。
オリビーの光属性魔法は貴重な資料になる。だから僕が学院を去る時までは友達ごっこを演じてやってもいいのかもしれない。
「当然ですよ。僕とオリビーちゃんの友情は不滅です!」
「うん!」
再び握手を交わす。その後も魔法論をオリビーに教えた。
やがて、閉館の時間が訪れ僕達は寮へと一緒に帰ることとなる。
☆☆☆相部屋で二人きり
二人で食事を終えて後片付けをしていると……オリビー戻ってきた。
「ほんと何から何までごめんね。私も何かしたいんだけど」
「いいえ、僕にとって家事は趣味のうちですので」
「私だって家事出来るんだよ。でも、ティアちゃんがあまりに完璧すぎて……」
そういいながら、オリビーは僕の隣で食器を片付けを手伝ってくれる。
そんな時だった……
「きゃーーーーーー!」「きゃーーーーーー!」
隣の部屋から悲鳴が聞こえた。
「ティアちゃん一体何が……! 恐らく隣の部屋からだと思うけど」
「とりあえず向かいましょうか……なにかあったのかもしれません」
片づけを途中でやめて、オリビーと隣の部屋へ向かう。
「何かありましたか! 大丈夫ですか!」
ドアをノックをしても返事はない。いったい何が起きている?
「ティアちゃん鍵が開いてるよ……」
ドアを開けようとするオリビーの手を止めた。
「迂闊に開けるのは良くないです。何かしらの罠が張られている可能性がありますから……」
「ティアちゃんがめっちゃ強く手を握ってくれた……」
最悪の事態を想定するしかない。もう部屋にいる二人は……
「確か隣の住人は……」
「ナイティーさんとアルティーさんだよ。ティアちゃんの大ファンの……」
だから、僕が隣から出てきたときあんなに嬉しそうだったのか……僕のファンんってなんだよ。
会話はしたことがないけど……入学して初日に死ぬなんてことがあるのだろうか?
「僕が先に入ります」
「危ないよここは私が……光属性魔法があるし」
「経験上。僕の方が不測の事態に対応できる可能性は高いです。それよりも、オリビーちゃんは僕の背後を守ってほしい……」
「わ、分かったよ!」
それだけ言うと僕が先行して部屋に入る……すると……!
「なっ……これは……! ナイティー様! アルティー様!」
寝間着姿の二人が意識を失い倒れていた。
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