第13話 お茶会のお誘い

☆☆☆大混戦


授業が終わり放課後になると学院では食堂でお茶会が行われるらしい。


学院では気に入った生徒に対しお茶会へ誘いする伝統が存在している。


そして僕はというと……


「ティア様! ぜひ私達のお茶会にいらしてください!」


「いいえ、私達のお茶会に!」「私が!」「私の!」


大量のお誘いが来ていた。一体なぜなんだ……


「私が一番乗りです!」「一番とか関係ありません! やりますか!?」


そして喧嘩が勃発しそうになるまで騒ぎは大きくなっていった。


「良いですの、やってやります!」


流石に止めないと不味いだろう。


「ちょっと、皆様落ち着いてくださ――」


「「――ティア様の良いとこ言い合いゲーム開幕!」」


「え」


な、何が始まっているんだ……?


「お美しい所作! 優雅な容姿! 講師に負けることのない知識量!」


「優雅な身のこなし! 美しく肩まで伸びた黒髪! 華奢な体格! 最高です!」


……なんだこれは。


「かわいい! かわいい! ティアちゃん最高にかわいい! 料理も上手でお嫁さんにしたい生徒第一位!」


そこにオリビーも参加してきた。お嫁さんにしたいって……僕がか?


「お、オリビーちゃん!?」


「おーほっほっほ! 確かにティエラリアさんをお嫁さんにしたい人多そうでざますザウルス」


僕に集まる有象無象はその声が聞こえると道が開かれた。


「「「「ラーリア様!」」」」


ラーリアとロムリスが僕達の教室へ入ってきた。


「ティアさん。本日はわたてくし達のお茶会に招待しますでざますザウルス」


「ラーリア様のですわは何処へ……ですが、ざますザウルス……何かとても良い響きですね」


「「「ざますザウルス!」」」


クラスのみんなが連呼していた。


「もちろん。オリビエ様もご一緒に如何でしょうか」


「私もいいんですか……てっきりティアちゃんの誘いかと思いましたので」


オリビーを誘いながらもロムリスは僕のことを見つめていた。やはり目をつけられているか……まずいことになったな。


「きゃ~~~上級生であるラーリア様からのお誘いなんて、とても素晴らしい事ですねティア様! 流石の私達も引き下がるしかないです~~~あぁ! 一刻も早くお茶会観戦チケットを作らなければ!」


モキヤラブはテンション高くなり回転していた。


いや、お茶会を観戦するってなんだよ。


「それでは向かいましょうざますザウルス! ティエラリアさん。オリビエさん」


こうして僕達はラーリアのお茶会に招かれることとなる。


☆☆☆上級生のお茶会


案内されたのは思ったより質素な中庭だった。公爵であるのだから、もう少し豪勢なお茶会かと思っていたが……


「どうぞおかけになってざますザウルス」


ロムリスはメイド服に着替えていた。スカートも長く落ち着いたロムリスにピッタリな衣装ともいえる。


「うわぁ~ロムリス先輩凄いメイド服似合っています! 凄く綺麗です!」


「ありがとうございますオリビエ様。それではお茶会の準備を……」


食事や紅茶の準備をしている。手持ち無沙汰だったためつい……


「僕も手伝いますよ。ロムリス様」


「いいえ、お構いなく。それよりティエラリア様も私の容姿を褒めてください。メイド服ですよ。メイド服。皆さま大好きですよね……」


なんで?


「えっと……ロムリス様にとてもお似合いの服装だと思います」


「それだけですか……もっと褒めてください。メイド服ですよ」


メイド服だからなんなんだよ……一体何が狙いだ……?


「えっと……給仕をしている姿がとても美しく。紅茶の淹れ方にも拘っていますね……高いところから紅茶を注ぐ優雅な姿が想像できます」


「うっ……し、失礼します」


ロムリスは顔を真っ赤にしていた。するとカップを机に置きポットを持ち階段へ上っていく。そして……


「ちょっと! ロム! お止しなさい! 普段頭の上からポッドからカッブへと注いでいますのに、どうして二階へ向かうでざますザウルス!」


「はぁぁぁぁぁ!」


ロムリスは二階からカップ目がけて紅茶を注いだ。何もそこまで高いところから注がなくていいだろう。


「うわ~すごい。ティアちゃん。あの紅茶に虹がかかっているよ!」


「そうですね、でもあの高さから紅茶が注がれれば当然……」


注がれるラーリアのカップを見ると……


「ちょっとロム! 私に水滴が飛び散っているざますザウルス! ぎゃーーー! ぎゃーーーー!」


どんなに優れた戦場帰りでも、二階から紅茶をカップに注ぐことなど不可能だろう。水滴が飛び散るがラーリアにだけ掛かった。


やがてロムリスが階段から降りてくる。


「すみません。つい、ティエラリア様に褒められたのが嬉しくて……私史上一番を目指し高くから注ぎました。これがお二人の分です」


僕達の分は普通に注がれた。紅茶からはとても良い香りがしている。


「ちょっとロム! 私の分だけ滅茶苦茶飛び散っているものではありませんかざますザウルス!」


「味は一緒ですので大丈夫でしょう。客人にそのような無礼な物を出せると思いますか? それではソーフィア家の名が廃れます」


「それもそうざますザウルス……まぁ、被害が私だけならば我慢すればよいこと、それよりもお二人にかかっていないことが驚きです」


明らかにロムリスはラーリアだけワザと飛び散らしたな。僕達に掛かっていないのはおかしいものだ。


ラーリアは水属性魔法を使い汚れを一瞬で消した。かなり手馴れているみたいだ。


「私の主……ちょろすぎる……」


だからロムリス心の声が漏れているぞ……!


「それでは優雅なお茶会を始めましょうざますザウルス」


紅茶を飲むとやはり一級品を使っているのが分かる。


「うわ~凄く美味しいです! ロムリス先輩流石ですね!」


「ありがとうございます。オリビエ様……(チラッ)」


ロムリスは僕の感想を待っているみたいだ。


「この茶葉は共和国の最高級品を使ったものですね。しかも初摘みファーストフラッシュのみを使用したことによって、香りが高く爽やかな味が特徴的ですね……茶葉の用意はロムリス様が?」


「……は、はい(適当に高い物を選んだだけで茶葉なんて知らないです)」


「なるほど、それではこの茶葉にベストな時間。ベストな温度で淹れたことにより紅茶の美味しさが引き立っています。流石ラーリア様の従者です。ロムリス様」


「そそそそそそ、それほどでもないです。茶葉が良いだけです(全然紅茶の淹れ方とか分からなかったけど。ティエラリア様にものすごく褒められた。最高!)」


物凄く顔を真っ赤にしていた。これで良かったのだろうか……


「ロムもお座りになって。さてと優雅なティータイムしましょうざますザウルス!」


こうして僕達のティータイムが始まった。

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