第11話 ですわ禁止令発令
☆☆☆語尾選び
「で、ですわを、禁止ですわ~~~~」
思ったよりダメージがあったようだ。
「なるほど、その手がありましたか、ティエラリア様は罰ゲームを考える天才のようですね」
罰ゲームを考える天才って言われても嬉しいものではない。
「ちょちょちょちょっとお待ちになって! 『ですわを禁止』とはどういうことですわ!
反応がロムリスと同じである。従者と主はよく似るとはよく言ったものだ……
「罰ゲームは辛ければ辛いほど良いと仰ったのはラリー様ですよ。それにこの罰ゲームは誰にも迷惑が掛からないものであり、ラリー様自身が我慢すればいいだけの話です」
「ですわ……確かにそう仰りましたが……私のですわが一日使用禁止なんて……では語尾に何を付けて生きていけばよいのですかティエラリアさん!」
「え、えっと、オリビーちゃん任せます!」
オリビーに回した。
「え、私!? じゃ、じゃあ……『デ~ス』とかどうかな」
「『デ~スワ』にしませんこと?」
「それではもはや『ですわ』と同じ、あまり変化がないので、オリビエ様二十点です」
「(が~ん)やっぱり私には荷が重かったよ……ティアちゃ~ん」
オリビーの頭を撫でて宥めている。二十点はショックだったか……
「元気出してくださいオリビーちゃん。今二十点であればこれから百点になる可能性がありますから! 伸びしろありますよ!」
適当にフォローしておいた。
「あ、ありがとう~ティアちゃん……ほんと優しい……」
しかし、ですわを禁止にしただけで、どうしてラーリアの語尾大喜利大会になってるんだ……
「では、私から提案させていただきます。ラリー様の語尾は……本人の名から頂いて『ラリー』というのはいかがでしょう」
ロムリス罰ゲームする側なのに、どうしてこちら側に来て語尾考えているんだ……
「分かりましたラリー! この後授業ラリー!」
ダリィに聞こえるな何か……
「その言い方ですと『授業ダリィ』聞こえますね……凄く気怠さを感じます」
「ラ、ラリー(ですわ)!?」
「ふふふ……私の主……面白すぎ……一生遊んでられる……」
ロムリスの本音が漏れているぞ。確かにラーリアと会話をしてかなり愉快な人物であるため、弄ぶのが楽しい気持ちは理解できるが……従者としてどうなのだろうかそれは……
「そんなことより、ティエラリアさんに決めてもらわないと意味がないのですっ(わ)……じゃなかったラリー!」
早く終わらせないと。このままでは昼休みが終わってしまうし、肝心の調べ物もできないじゃないか……あ~……もういいや適当な語尾で納得してくれるだろう。
「そうですね……では語尾に『ザウルス』をつけてみてはいかがですか?」
「「「ザ、ザウルス!?」」」
あ、ダメな空気かこれは……それもそうだよ、何がザウルスだよ。
「わ、分かりましたわ。ティエラリアさんがそう仰るのでしたら。私の語尾は今日一日中『ザウルス』になりますザウルス」
「っぶ……っぶぶぶぶっ!」
あ、オリビーが変な語尾に笑いを堪えている。
「おーっほっほっほ! 語尾が『ざます』と似ていますので、凄く良いザウルス」
「『ざます』ですか……」
僕がそう呟くとラーリアが目を合わせた。ざますに何かを感じたのか。
「ザウルス(頷き)」
どうやら考えは同じのようだ……ならば!
「「ざますザウルス!」」
あ、二人で揃って言うと凄く気持ちよい。それに響きも良い。
ざますザウルス……
☆☆☆ざますザウルス
「ざますザウルスって何か……とてつもなく気持ちのよい言葉だね! ざますザウルス……ざますザウルス!」
オリビーが気に入ったようで連呼する。
「ダメです……ちょっと、ラリー様面白すぎますって……! ざますザウルスって……なんですか……! あははは!」
ロムリスは堪えきれずに声を出して笑った。
「あら、私以外の前でロムがこんなに笑うなんてとても珍しいざますザウルス。これもティエラリアさんの実力でざますザウルス?」
僕も『白銀の帰還者』の異名を持つロムリスは常に冷徹な存在だと思っていた。
「私だって人の子ですから笑いますよ。ただ、皆様は私のことを怖い人物だと噂されていますので、そういう風に振舞わないといけなくて……」
なるほど、ロムリスも苦労をしているんだな。少なくとも僕も恐怖を感じたことはある。
すると、昼休み終了の予鈴が鳴った。結局調べ物が出来ずに終わってしまった……また後で図書館に寄る必要がある。
「あら、予鈴が成りましたですっ……じゃなくて、ざますザウルス!」
いつからかラーリアの語尾がざますザウルスになっていた。
「あれ、確か私達の授業って魔法実技だったよね。ティアちゃん早く着替えに行かないとざますザウルス」
ざますザウルスがオリビーに伝染している。魔法実技か……着替え。着替え……着替え……
「笑わしてもらいました。ティエラリア様にオリビエ様。本日はありがとうございます。もし、学院で困ったことがございましたら、私に相談してください。力になりますよ」
現在進行形で困っているのだが……しょうもない罰ゲームのせいで調べ物もできなかったし……
「ロム! 私のセリフを取らないでざますザウルス。下級生を助けるのは上級生の務めでざますザウルス」
ロムリスはお辞儀をする。
「ありがとうございます! 先輩方! それでは私達はこれで失礼しますね!」
「失礼します」
僕もお辞儀をして図書館を去ろうとする。しかし……
「それとティエラリア様……一つお伺いしたことが」
「何でしょうか? 語尾の期限は今日一日で――」
すると僕の耳元でロムリスは囁く。
「――あなたは……『戦場帰り』ですか?」
……え?
「どうしてそう思ったのですか?」
冷静を装うが……
「決闘の行動全てです。明らかに私を知っていたうえでの対応でしたので……それに『オーバースタンピード』が命中する場所全てに的確な障壁を張っていました。それは一度でも見たことがなければ対応できない動きです」
『戦場帰り』隣国間の戦争に出向き、帰ってきた者に与えられる称号だ。
ラーリアとロムリスはその称号を持ち、学院にもちらほらいるが……
確かにロムリスのことは戦場で見たことがある。それは『組織』の活動にて経験したものだ。だから味方として戦場に出向いたことはない。
「ですので、戦場で私のオーバースタンピードを見たことがあると考えました。私と同年代の人であれば部隊も一緒だと思いましたけど……見覚えがないのです。ティエラリア様の顔でしたら絶対に忘れないはずですが……」
もしここで『戦場帰り』と言って嘘に嘘を重ねるのも不味い。どうするべきか……
「……」
そう迷っていると……
「今は時間がないですから、今度お茶でもいかがでしょうか、ティエラリア様と二人きりでお話がしたいです……」
手を優しく握られる。どういうことだ……いったい何が狙いなのだろうか……
「ちょっと、ロム何の話をしているでざますザウルス。お二人は着替えもあるのですし、解放してあげなさいざますザウルス」
「失礼しますね。ティエラリア様」
それだけ言うとロムリスは頭を下げ立ち去る。
「何の話をしていたの? ティアちゃん」
「ちょっと……ですね、それより授業の場所に向かわねばなりません」
「そうだね。遅刻したら怒られそうだし」
僕達は更衣室へ移動した……
しかし、ロムリス。困ったことになったな……
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