第10話 過酷な罰ゲーム

☆☆☆ロムリスの罰ゲーム


「ティアちゃん。何を話していたの? あ、ラーリア先輩にロムリス先輩。いらしていたのですか。こんにちは」


僕が席に戻ってこないから探しに来たのかオリビーも参加する。


「御機嫌よう。オリビエさん」「御機嫌よう。オリビエ様」


「実はかくかくしかじか……でして」


僕はオリビーに事の経緯を話した。


「なるほど、奴隷にならない代わりにラーリア先輩とロムリス先輩の罰ゲームを考えている最中だったんだね……」


「そうですわ。ですが、わたてくしは仮にもこの国の公爵ソーフィア家ですわ。生半可な罰ゲームでは満足しません事よ! しっかりと私が『嫌だ』と言う罰ゲームを考えてほしいのですわ!」


「はい。できればラリー様の方を厳しめにお願いします。私は恥ずかしいセリフを言うみたいな軽めの罰ゲームで勘弁してください」


ロムリスは意外と軽口を叩ける人だったらしい。怖いイメージが付きまとっていたが……


「ちょっとロム!」


「でも、罰ゲームですか、私じゃ何も考えつかないな……ティアちゃんはどう?」


一応考えはある。果たしてロムリスに言っていいものだろうか……


「それではロムリス様。ラーリア様のモノマネしながら今日一日を過ごしてください」


「ふざけないでください。ティエラリア様。どこが軽めの罰ゲームなのですか?」

「はぁ……ティエラリアさん。おふざけるのも大概にしてくださいですわ。ロムにとってそんなもの罰ゲームでも何でもな……ですわ(驚き)!?」


意見が真っ二つに割れた。


「ちょちょちょ、ちょっとロム! どういうことですか! どうして私の真似をしながら一日を過ごすことがかなり重めの罰ゲームと解釈していますの! もしろ、とても光栄なことでしょうが!」  


「いいえ、私がラリー様の真似をするとか、一瞬でも辛いのにそれを一日させろなんて鬼畜の所業です。いちいち高笑いしないといけないとか……その無理です。ですわをつけることすら正直嫌なのに……」


「ですが、嫌なことをしなければ罰ゲームではありません。素直に受け入れるのですわ、ロム」


ロムリスの顔が青ざめていた。


「わ、私に死ねと……?」


「ですわ!?」


「一日中ラリー様の真似をするくらいなら。一生ティエラリア様の奴隷になる方がましですよ。あ、それじゃご褒美ですね。普通あんな話し方恥ずかしくてできません」


そこまで言うのか……


「でででで、ですわ!? 私の真似事は奴隷以下の存在ですの……従者としてアルマジロ行為ですわ! じゃなかった。あるまじき!」


すると、ロムリスは僕の方を向き土下座をする。


「どうにか、ラリー様のモノマネだけは勘弁してください。ティエラリア様の靴を舐めるとか、毎晩必ず一匹蚊がいる部屋で眠るとか、夜の学院を全裸で徘徊するとか、トイレ行く時は使用中の個室へ上から入って一緒に用を足すとかでもいいですから」


それだけ嫌なのか、後者の方は完全に犯罪だし……


「流石にそれよりはマシですわ! ムッキー! 怒りましたわよ! ロム!」


「ラーリア様もロムリス様も落ち着いてください! 僕が悪かったです。別の罰ゲームを考えますから!」


「ラーリア先輩もロムリス先輩も仲が良くて羨ましいな……」


二人の喧嘩を微笑ましく見守っていたオリビーであった。


☆☆☆ラーリアの罰ゲーム


結局。ロムリスの罰ゲームに関しては一旦保留になった。適当に考えたラーリアのモノマネが、思ったよりロムリスのメンタルにクリティカルヒットだったらしい。


「おーっほっほっほ! とりあえず。私の罰ゲームに関してですわ! どんなものでも出てこいやですわ!」


「今回はオリビーちゃんが考えてはいかがでしょうか?」


「う~ん。罰ゲームか……そうだ。逆にロムリス先輩の真似はどうですか?」


すると、ラーリアの顔が一瞬で無表情になった。


「……私はラリー様の忠実なる従者です……喰らいなさい! 『オーバースタンピード』……っふ!」


思ったより似ていた。『っふ!』とは言ってないだろうけど。ラーリアはロムリスの特徴をよく掴んでいるようだ。


「うわ~凄く似ていますね! ロムリス先輩が乗り移ったみたいです!」


「……ってこんな事余裕でできますから! 何も罰ゲームじゃないですわ! 従者の特徴を掴んでて当たり前のことですわ! 全然恥ずかしくありません!」


「全然似てないですよ。私ラリー様の忠実な従者ではないですし。むしろそんな光景見せられる私が罰ゲームですよ」


「ですわ!? 裏切りですの!?」


「前者は冗談です。しかし、今の真似は少し私を馬鹿にしていますね……ここはティエラリア様。私の時と同等かそれを超える罰ゲームでお願いします」


そして僕に降りかかる。


「僕ですか……しかし、すぐには思いつきませんね……」


「例えば、ラリー様が目に入った生徒のスカートを捲り続けて、捲った回数だけスタンプカードを押して満杯になったら、学院長のスカートを捲るとか」


どれだけモノマネされたことを引きずっているんだよ。ロムリスは……


「それは誰かに迷惑が掛かる行為ですわ。流石に承諾致しかねます。実害を被るのは罰ゲームを受けた本人だけでいいですわ」


真っ当な正論が飛んでくる。


「言葉が過ぎました。すみません」


ロムリスも素直に謝罪する。


しかし少し嫌な罰ゲームか……ラーリアは高貴な口調をしている。ならば……


「あ、ティアちゃんがなんか思いついたみたい! 閃いた顔も素敵だね!」


「思いつきました。それではラーリア様。今日一日『ですわ』を使わずに過ごしてください!」


「で、でででででで……でっす……わ……?」


その時ラーリアの顔色が変わった。


「で~~~すわ~~~~~~!」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る