第9話 図書館奴隷宣言
☆☆☆最初の授業
適当なところで貰った手紙を読むのをやめる。これ以上は精神に支障をきたしそうだ。やがてクラスメイトは全員揃い講師の授業が始まった。
「今日はこの世界の成り立ちと魔法の基礎について話す。今から五十年前に人類は魔法に目覚めた」
今回は最初の授業だけあって基礎中基礎だ。この世界の成り立ちについてだ。
「それから人類は『魔法師』と『非魔法師』に別れたが、非魔法師は淘汰されていき絶滅した。やがて研究で魔力は『女性』の方が優れていると明るみに――」
誰でも知っていること。誰もが知っている事実だ。
五十年前に突如人類は魔法を使えるようになり、旧人類の非魔術師を絶滅させた。
それから数年後。研究者によって魔法師は『女性』の方が優れているとされ、世界の均衡は女性達によって集約されていく。
「まぁ、この世界の成り立ちなんてみんな知っていることだ。次、魔法の属性について説明をしよう。魔法には火。水。風。地の四大属性が存在する。恐らくここにいる生徒たちはなんらかの属性を持っているはずだ」
「だが、四大属性のどれにも当てはまらない魔法も存在する。それが無属性だ。無属性魔法は固有魔法とも呼び、本人にしか扱うことのできない魔法が多い。そのため四大属性と違い先人の知恵を借りることが出来ないため、己で使い方を習得しなければならない。かなり苦労することになるだろう。それともう一つ属性は存在する」
周囲がオリビーに向かう。
「それが、オリビエ生徒の持つ『光属性魔法』だ。とても希少でありこの国では十年前に暗殺された魔法研究師ロストベルタ卿以降存在を確認されていない。言わば奇跡の魔法師だ」
「私が……奇跡の魔法師ですか?」
「そうだ。オリビエ生徒。恐らく君の魔法は学院どころかこの国を動かすことになるだろう。だが、光属性魔法が使えるからと言って贔屓はしないので、しっかりと授業には出るように」
「は、はい。精進します!」
その後も色々な魔法に関する授業が続くが、基本的なことは全て分かっているので聞き流す。
さてと、今後の任務について考えようか……
☆☆☆図書館にて
授業が終わり昼休み。オリビーと共に図書館へ訪れた。学院の図書館は国から魔法書が集まり、ありとあらゆる知識が溢れている。
「うわ~~ここが図書館か~~……本がいっぱいある」
オリビーに必要な本を手に取り渡す。あまりオリビーに時間を使っている場合ではないのだ。
「こちらの魔法書は光属性魔法について詳しく書かれていますよ」
「ありがとティアちゃん。著者は魔法研究師で光属性魔法師の『ニコラス・ロストベルタ』か確かにこれなら参考になるね!」
『ニコラス・ロストベルタ』十年前に暗殺された。グランバイア共和国の光属性魔法師。及び魔法研究師である。
「僕は読みたい本を探してきますね。少し時間が掛かるかもしれませんが」
さてと……図書室はこの学院の歴史があるはずだ。何とかそれを調べないと……学院の歴史書を漁っていると声を掛けられる。
「あら、ティエラリアさん御機嫌よう。読みたい本をお探しですわ?」
「御機嫌よう。ティエラリア様。先日の件は何度お詫びを申し上げればよいか……」
そこにはラーリアとロムリスがいた。二人は僕に会うと頭を下げ続ける。
「御機嫌よう。ラーリア様。ロムリス様。決闘の件に関しては怪我がなかったので大丈夫です。顔を上げてください」
「ティエラリアさん。なんと心の広いのですわ! ……ところで
「約束……ですか?」
「はい。私とラリー様がティエラリア様の奴隷になるとお約束しました」
あ、そういえばしていたな。あれはラーリアが負けるつもりないからした約束であって、なんやかんやで有耶無耶にしてそうだとは思ったが……
「そうですわ! ソーフィア家の者が他人と交わした約束を違えるなんてあってはならないことですわ!」
ラーリアはとても潔い。
「落ち着いてください。ラーリア様。決闘はお二人の反則負けということになっていますが、決して実力で勝ったわけではありません。僕達は貴方達二人に本当の意味で勝利をしたわけではないのです」
「ですわ(相槌)」
「確かにラーリア様とロムリス様は奴隷になるとの約束をしました。ですが、本当の奴隷とは果たして自らがなるものでしょうか? 本来奴隷というのは身分が低い者がなるものです。お二人が奴隷になってしまえばこの国の情勢が悪化します」
未来の公爵が奴隷になるなんてことあってはならないだろう。
「ですわ!(ですが)」
「ラーリア様は奴隷の扱い方に長けているかもしれませんが。僕は奴隷というモノを手に入れたことがないので、お断りさせていただきます」
「ティエラリア様がこう仰ってくださるのですから。奴隷の件はなかったことに……そもそもラリー様に奴隷は半端なく向いていない……ですわ……っぷ……」
ロムリスは少し笑いを堪えているようだ……その言葉にラーリアは……
「ロム。それは私に奴隷としての才能がないと仰りたいのですか! ちゃんとご飯だって作りますわよ! 私は奴隷だって超一流ですわ!」
意外と頑固なのだな。プライドが約束を違えることを許さないのだろうか。それと奴隷が一流ってそれは貴族的に大丈夫なのかな。
「この前朝食作ろうとしたら魔法兵器作っていたことをもうお忘れですか。『オーバースタンピード』クラスの不味さでしたよ」
『オーバースタンピード』クラスって何を作ったんだラーリアは……少し気になる。
「で、ですわ(ですが)掃除に洗濯だって私には可能性があります!」
「お願いですからラリー様。未来の可能性を信じて、私の仕事を増やさないでください。普段誰が家事をしていると思っているのですか」
その言葉からロムリスの絶望が伝わってきた。
「それに高貴な姿がとても素敵ですから。奴隷に成り下がるもったいないです。ラーリア様にはいつまでも花の様に美しい存在であってほしいです」
「で、でででででで、ですわ(歓喜のですわ)もっと褒めてくださいこと! ほんと素晴らしいですわねティエラリアさん!」
ラーリアは顔を真っ赤にして喜んでいた。
流石に奴隷は目立ちすぎるし、ラーリアの親に知られれば僕の身元を調べられる可能性がある。流石にそれは避けたい。
「では、奴隷とは別にティエラリア様のお願いを一つ聞くというのは如何でしょうか? 言わば罰ゲームのようなものです」
ロムリスがとても良い提案をする。
「ですわ? ロム。なかなか良き提案ですわね。ティエラリアさんもそれでよろしくて?」
「はい。お二人が納得してくださるのなら」
僕はラーリアとロムリスに罰ゲームを考えないといけないわけか……
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