第8話 二人のファンクラブ
☆☆☆朝食は
オリビーより先に目を覚ます。正直。寝顔を見られるのが怖いので布団を顔まで被って眠っていた。やがてオリビーが目を覚ますと……
「お、おはよう。ティアちゃん!」
「おはようございます。オリビーちゃん」
この寮で食事は各自用意とのこと。一応寮内に食堂もあるが僕や没落貴族のオリビーにはかなり高価だ。それならば手作りにした方が安く済む。
何より料理をするのは嫌いじゃない。下ごしらえをしていると……
「う、うわ~。す、すごい。ティアちゃん。料理できるんだ」
「はい。もしよろしければご一緒に食べますか?」
「いいの?」
「一人では食べきれません。それに自分の分だけ作るなんてしませんよ。ちゃんと貴方の分も作っています」
「……あ、ありがとう!」
それからオリビーは僕が料理を作る姿をずっと見ていた。
「ほんとに手際がいい……なんかさ、朝起きたら料理の音が聞こえる生活って憧れるなぁ~」
料理の腕を褒められるのは悪くない。やがて料理が完成し二人分の皿に盛る。
「うわぁ~~~美味しそう。ティアちゃんの朝食凄すぎだよ!」
テーブルに朝食を並べる。円形の机に向かい合って座った。
「お口に合うか少し不安があります……どうかお手柔らかに」
「「いただきま~す」」
「凄い美味しい!」
オリビーは目を輝かせていた。僕の料理を笑顔で食べている。
「しかも、これ全部ティアちゃんの手作りなんて……こんな幸せあっていいのか……げほ! げほげほ!」
興奮のあまり食べ物を喉に詰まらせて咽るオリビー。本当にこの人は魔法のこと以外からっきしなんだな。
「大丈夫ですかオリビーちゃん。水を飲んでください」
とりあえず背中を擦ると、落ち着きを取り戻した。
「げっほ! ごめん。つい……嬉しくて……友達とこうやって朝食を食べるの初めてで……」
「大丈夫ですよ。朝食を食べている時間はどこにも行きませんから」
「うん、そうだよね……うん」
食事を終えて僕達は学院に向かう準備をする。カーテンがあるので着替えは覗かれないだろう。
正直僕も異性の裸を見るのは気が引ける。制服着替え終わると、同じくオリビーも出てきた。
「これから一緒に登校だね」
「はい」
こうして僕達は寮を出て学院へ向かった。
☆☆☆ベストパートナー
僕達が学院の正門を通ると、周りにいた生徒達が歓喜の声を上げる。
「きゃーオリビーさんとティア様が一緒に登校しています! 何と絵になるのでしょう。額縁に入れて寮に飾りたいです!」
「学院最強先輩二人の猛攻を持ちこたえることができるなんて、まさしくベストパートナーって感じがしますね~」
「見てくださいよ。あの二人歩幅が一緒なんです。神話的に寄り添いまくっています! きゃ~~~~」
「なんか、私達有名人になっちゃった気がする……」
「決闘とオリビーちゃんの光魔法は学院中に広がっています。あの二人と戦い負けなかっただけでも賞賛に値することなのですから、この賑わいも仕方がない気もしますね」
「それもそうか……ベストパートナーって言われちゃった……えへへ……ほんとに額縁にならないかな……」
流石にならないだろう。僕達はそのまま歩いて行った。
教室へ着くと一人の生徒が僕によって来る。
「御機嫌よう。モキヤラブ様」
「あ、あの、これを! ティア様を想い書いた紙々です!」
モキヤラブが数十枚の手紙を持ってきた。所謂ラブレターだろう。どうしてそんなにモテているのだろうか僕は……
「こ、これ全部モキヤラブ様が?」
「いいえ、私が代表して皆さんのお手紙を纏めました。どうぞお受け取りください。あ、返事の方は大丈夫です! 我々はお二人の関係をずっと見守っています! ファンクラブも現在進行中ですよ!」
普通に怖いからやめてほしい。手紙を受け取るとモキヤラブは席へ戻っていく。
これ全部読まないといけないのか……
「うううううう~~~」
すると、隣のオリビーが手紙を見て唸っていた。
「オ、オリビーちゃん? ど、どうなされましたか?」
「モテモテだね~ティアちゃん~ううう~~~」
顔を膨らませている。まさか嫉妬か? 君から見れば僕は同姓だろうに。
「あ、オリビーちゃんにも手紙届いてますよ!」
オリビーに宛てられていた手紙もあったので渡す。
「え、僕にもあったの……全部ティアちゃんの物かと思ったよ」
オリビーは受け取った手紙を読むと顔を真っ赤にしていた。
「な、な、ななななにこれ! 私とティアちゃんの妄想日記をなんも恥ずかしがることもなく書き記されているよ! わーーーーー」
僕も読んでいるがとても正気とは思えない。まさか、この内容を一晩で書いたというのか?
なんだよオリビーとキスって頭おかしいんじゃないのか? それにあんなことやこんなことまで……それを本人に見せる神経が恐ろしく感じる。
これからファンクラブを作るとか言っていたけどなんだそれは……末恐ろしい。
だが、この程度のことで僕が動揺することはない。なにせ僕は『折り紙』だ。常に冷静を保っている。
「それだけ皆様が僕達のことを想ってくれていると思えば素敵ではありませんか」
「そ、それはそうだけど……ちょっと過激すぎるよ!」
オリビーは読み終わった後にスカートを押さえて、顔を真っ赤にしていた。
「うぅぅぅぅ~~~」
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