第5話 オリビーの魔法属性

☆☆☆次はこちらの番!


「作戦通り……上手くいっているよ。ティアちゃん」


ここまでは想定通りだった。ラーリアが魔法で牽制している内に、ロムリスを僕達の死角に送り込み攻撃。


既にオリビーとは話し合っていたため、ある程度対応ができる。


「おーっほっほっほ! さすがは特待生。わたてくしとロムの完璧な連携を凌ぐとは思いませんでしたわ……おやりになりまして! その障壁はかなり強固なものと見受けられますわ!」 


「ティエラリア様も私の攻撃への的確な対応が素晴らしいです」


ラーリアは未だ本気にすらなっていない。それに、ロムリスは百戦錬磨の強者。さっきのは下級生だからと手を抜いてくれていたのだろう。


オリビーの障壁はかなり強固だ。


次はこちらから仕掛ける……!


オリビーに合図を送ると二人の元へ駆け出す。オリビーの魔法が出るより先に、周囲を無属性魔法が作り出す幻影で囲った。


「『シャドー・フェイク!』」


「『無属性魔法』! 私と同じ……だからあの身のこなしが出来たというわけですか!」


【無属性魔法】は四大属性のどれにも該当しない魔法であり、未だ解明されていない未知の魔法が無数に存在している。


そのせいか育成のテンプレートが出来上がっておらず無属性魔法師は自らで魔法と向き合っていかなければならない。


何せ自らの能力が未解析なものであり、不確定な条件が付きまとうからだ。


無属性魔法に対する世間の扱いはあまり良いものではない。


そのため無属性魔法師は身体能力が高い者が多く、ロムリスはその中でも随一の実力者だ。


幻影によって隠蔽されたオリビーの攻撃魔法が二人へ飛んでいく。


「なるほど、オリビエさんの属性を隠すことによって、こちらに魔法を悟られないということですわ! ですが四大属性障壁を展開すれば!」


「――いいえ、ラリー様この魔法はフェイクです。視覚に頼らず魔力を感じてください。かなり巧妙にカモフラージュされています!」


やはりロムリスには気付かれていた。


「ですわ……っな! なんですって~! ロムどうすればよいのですわ!」


「大丈夫です。ラリー様。私が対応しますから……『オーバーフロウ』」


すると、ロムリスは目を瞑った。そして魔力を込めた木剣でオリビーが放った攻撃のみを斬り落としていく。


僕の放った威力ない幻影魔法は完全に見破られていた。


……馬鹿な。そんなことまで可能だと言うのか? あの白銀の帰還者!


「嘘。全部撃ち落されてちゃった……」


だが……


「っは! ……後ろです! ラリー様!」


ロムリスがオリビーの攻撃を捌いている最中に僕はラーリアへ全速力で接近していた。


「です……わ?」


木剣で一撃を入れさえすれば……!


恐らくロムリスが投げた木剣が飛んできたのだろう。紙一重で躱し、そのままラーリアに攻撃を……


あれ、足が……いや、地面が酷く水っぽい……動きづらいぞ……しまった! 


「おーっほっほっほ! 引っかかりましたわね! ティアさんの足場を泥濘に変えて差し上げましたわ!」


「ティアちゃん」


水魔法と土魔法の応用か……! まるで四人の魔法師を相手している感覚に陥る。


抜け出そうと、もがけばもがくほど地面が沈んでいく。


「降参しなさい。何。貴方達は良くやりましたわ。私とロムの攻撃に一度は耐えることができた。誇ってよいのですわよ! おーっほっほっほ!」


「ティエラリア様の動きは完璧でした。相手が私でなければ実戦でも十分通用する戦法でしたよ……気に病む必要はありません」


「やはり、僕では実力不足でした……」


どう頑張ったって僕の力でロムリスに敵うはずがないのだ。


無属性魔法も、身体能力も僕の完全上位互換存在である。


「おーっほっほっほ! これで私の奴隷になりますわ! 何も恐れることはないです。必ずあなたを幸せにして見せますわ!」


震えを隠せない。相手に支配されそうになる感覚というものは、やはり恐怖が付きまとうものなのだ。


「……させない……させないから!」


すると、オリビーからものすごい魔力の波動を感じた。


「「!」」


☆☆☆光よ


「……オリビア様の魔力が変わった……?」「ですわ?」


この場にいた全員がオリビーに注目していた。


「そういえば、ティア様ばかりに注目していたけど、あの特待生ってラーリア様の攻撃魔法を当たり前に防いでいたよね」


観客の声が聞こえてくる。


「確かに、でも、あの子の属性ってなんなんだろう……」


「使っている所も相手の魔法が干渉していて見えなかったよね……」


オリビーの周りには光が溢れ出す。そして――


「『オール・ライトニング』」


その瞬間。オリビーは輝きだし一瞬で僕を救出した。


「……何」「……ですの!?」


一瞬の出来事にもっとも戸惑っていたのは対戦相手の二人だった。


「……私の反応が遅れた……ですわ?」


「……それも当然です。なるほど、どうしてあなたが特待生であるのか、その意味がようやく分かりました……オリビエ様」


そう、オリビーが今使用した魔法によって、特待生として入学できたことをこの場にいた誰もが納得した。


僕も事前に聞かされていなければ、おそらく取り乱していただろう。


「オリビエ様が使う魔法属性は、世界で最も使用者が少ない奇跡の魔法『光属性』であると……この場にいる誰もが納得しますよ」


「……私でも使えない魔法ですわ。ですわ……」


『光属性魔法』僕とロムリスが使う無属性と同じ、四大魔法のどれにも該当しないものである。


しかし、癖のある無属性とは違い、その実用性は四大属性を必要としない。


四大魔法同士が打ち合いになれば有利になる属性は出てくるが、光属性魔法は四大魔法の全属性に有利に働く。および魔力も低燃費であり、威力も絶大だ。


言わば最強の魔法属性である。


ただ、弱点があるとすればそれは使用者が少なすぎるということだけだ。


光属性の魔法師がいれば、通常魔法師の千人分に匹敵するほど実力を持つ。


つまり、今僕の隣にいる特待生は、千人に匹敵するんだ。


「……オリビー様!」


オリビーに合図を送る。


「行くよ! ティアちゃん!」


こうして更なる反撃が始まる。

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