第4話 決闘の始まり
☆☆☆決闘に賭けるもの
僕達は作戦会議と準備を終えて円形の闘技場へ向かった。さすが名門校だけあり本格的な作りだ。
観客席も用意されていて、席には決闘を聞きつけた生徒達が訪れている。
すると、すでに準備を終えていたラーリアとロムリスが待ち構えていた。
「おーっほっほっほ! 漸くいらっしゃったのですわ! 待ちくたびれてしまいました。ロム。私達はどれくらい待ちましたか?」
「……ラリー様の髪をセットし終わる時間約三回分です」
ラーリアの髪をセットする時間とか分からないし。でも結構かかりそうだな。それを三回分なんて、一体いつから待っていたのだろうか……
あ、上級生は僕達と違って、挨拶も何もないから放課後が訪れるの早かったんだ。
「なんと、それぐらい待ちくたびれてしまうなんて、だけど、
つまり、決闘申し込んでからずっと待っていたんだ。暇なのかな……
「とりあえず、ティエラリア様とオリビエ様。決闘の準備ができたと見てよろしいでしょうか」
冷静な従者が問う。
「「……」」
僕とオリビーはうなずいた。
「私はラリー様の護衛兼世話係『ロムリス・アルバリア』お気軽に『ロム先輩』と呼んでいただけると幸いです」
綺麗な白髪のロムリス。冷静な表情に全てを見透かすような瞳。僕の経験上だが、ラーリアよりも腕が立つだろう。
「きゃ~ロムリス様素敵です~美しい~~」
というよりは……ロムリスの名を知らない生徒は学院に存在しないだろう。『白銀の帰還者』の異名を持っている。相当の実力者だ。
「オリビエさんとティエラリアさん。貴方達が決闘で賭けるものは、ティエラリアさん自身。だから私もロムを賭けることとします。好きにしてよろしいですわ!」
「え、ラリー様、一体それはどういう……あ、ですわ」
相談してなかったの?
「今決めました。こちらが負けた時のことは考えていませんが、そちらだけ何かを賭けるのは流石に理不尽ですわ。
いや、なんで二人が奴隷になるんだよ。いらないんだけど奴隷。
「な、なんと! ラーリア様とロム様がティア様の奴隷に!? ダブルハイパー滅茶苦茶羨ましい!」
観戦している生徒達が黄色い声を上げた。
「「「「きゃあああああ!」」」」
会場の盛り上がりにロムリスはため息を吐いた。
「はぁ……不服ですが承諾いたします。それでは決闘のルールについて私が説明を……」
決闘のルールはシンプルだ。今回は二体二で行われ、仲間の二名が戦闘不能になるか、本人が降参するまで行われる。
決闘にて命を奪う威力のある魔法は禁止されている。逆に殺傷能力がない魔法の使用は自由だ。
近接戦用の木剣で一本入れることが出来ても勝利となる。
「おーっほっほっほ! 決闘のルールが少し難しかったですわね」
いや、シンプルすぎるよ。
「要するにこの場にいる『一番強い者が勝つ』ということですわ!」
そういうわけではないと思うけど、そういうことにしておこう。反論するのもめんどくさいし。
「分かりました。ラーリア先輩。ロムリス先輩。準備は出来ています」
オリビーも準備が出来たみたいだ。
「はい、僕も準備完了です……」
そうなれば……決闘は始まる。
講師が審判を務めてくれるらしい。オリビーは隣で緊張をしている。
それもそのはず相手は一年以上先輩の成績優秀者だ。それに対し『白銀の帰還者』がいる。
境遇を聞くにあまり戦闘経験はないようだ。僕はオリビーの震えた手を優しく握った。
「大丈夫です。二人なら勝てます! ファイトですオリビー様!」
すると、強く握り返される。
「う……うん! 私がティアちゃんの分も頑張るから! こう見えても魔法には自信があるんだ……!」
「それでは決闘を開始します!」
☆☆☆決闘が始まり
「おーっほっほっほ! こちらから行きますよ! 『フレイムウィンド』!」
ラーリアは火魔法と風魔法を同時に使用した。四大属性の魔法を同時に使うことができるというのは本当だったのか……
火魔法は風によって威力が増し弾こうにも、風魔法で固定された斬撃によって難しくなっている。
……かなり速度が出ているものの避けられないほどではない。というより、攻撃が直線的すぎるので読みやすい。
「きゃ! ティア様が軽やかなステップでラーリア様の攻撃を全て躱しました!」
ラーリアは正々堂々と真正面から戦うタイプだ。確かに魔法の威力や精度は一流であるが実戦で使えるかで言えば否だ。
もしフレイムウィンドが不意に放たれたものであれば、僕は躱すことはできなかった……オリビーを見ると……
「……凄く速い攻撃……ラーリア先輩。さすがです……」
避けることをせず自らの魔法で防いでいた。見たところダメージはないようだ。
「あら、
しかし、今の一撃はラーリアがこちらの実力を図るために放ったものだ。
「――油断してはいけませんよ二人とも。貰いました!」
攻撃を受けている途中でロムリアは自分達の後方に回り込んでいた。恐らくオリビーは気付いていない。
「オリビー様。後ろです!」
ロムリスは反応が遅れたオリビーに狙いを定めた。木剣を振り下ろす。
「え……いつの間に……防御魔法を!」
オリビーは障壁を展開しようとするが間に合わないだろう。僕はロムリスに接近し持っていた木剣で弾いた。
「……今の一撃に反応できるとは……!」
ロムリスの狙いはこちらに定まる。集中だ……!
「あの『白銀の帰還者』であるロムリス様とティア様が渡り合っている!?」
「いいえ、ティア様は恐らく、辛うじてロムリス様の攻撃を弾くことに成功しているのです……だとしても物凄いことなのですが……」
観客の声が聞こえる……その通りだ。
やはり、ロムリスは化け物だ。流石に全ての攻撃は防ぎきれない。でも……
「ティアちゃん! 中に入って!」
そう。ロムリスの攻撃を数秒だけ持ちこたえることが出来ればよかったのだ。
攻撃を貰いそうなところオリビーの障壁が展開され中に入る。
ロムリスの攻撃はオリビーの障壁によって弾かれ続けた。やがて諦め仲間の元へ戻っていく。
防戦一方だったが、何とか第一波を凌ぐことが出来た。
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