猟銃と私(3)

 私は警察署内で取り調べを受けていた。警察に対し私は自分でもわかるほどに笑顔で答えていた。


「猟銃で撃った動機は?」

「私彼にレイプされてたんです。いつ殺そうかなって!」

「殺すという考えに至ったのはレイプされたからってことだけ?」

「そうですよ? それ以外あります?」

「……じゃあ、何故貴方の上司を殺したあと」

「見られたからに決まってるじゃないですか〜。見られちゃったら殺す。口封じでお金を渡すなんて無駄です。普通に喋ると思うし」

「君は殺すということに対して、なんの躊躇もないのか」

「んー、躊躇してたら私が殺されます」

「……」


 たんたんと答える私に対して、警察は不信感を抱いているのか、困惑しながら答弁を記録していた。私の話している内容は何ひとつとして嘘偽りなど無い。本当のことを話しているのに有り得ないほど軽く話すのに違和感を覚えたのか、警察は医者を呼んだ。


 そう、精神鑑定にかけられることになった。


 ☆☆☆


 あの時から何年が経ったんだろうか。私は今おばあちゃんとなって猟銃を握りしめて、ゆらゆらと揺れる椅子に座っていた。来る人、来る人、見覚えのない他人ばかり。私が歳を食ったのか、はたまた世間が歳を食ったのか。


 猟銃の使い方を間違えた事をおじいちゃんは怒るかな。というかおじいちゃんどこ行ったんだろ。帰ってこないな。何年も。警察に行っても相手にしてくれない。


 おじいちゃん寂しいな。私。


 ☆☆☆


「可哀想にね。あのおばあちゃん警察に捕まってから刑期を終えて釈放されたけど何十年もあの家でずーっとゆらゆら揺れながら、おじいちゃんどこって呟いてるなんて」

「精神が狂っちゃったのね。まぁとりあえず私はあのおばあちゃんにお弁当届けてくる」

「気をつけるのよ」




 水口カナの起こした犯罪は世間を揺るがせた。

 だが彼女の今を知るものは語る。


 あれがおじいちゃん大好きだった、可愛い少女の今の残酷な姿だと。


 彼女の人生を狂わせた花森省三を許す訳にいかないと。


 花森省三、水口カナを犯し、その報いを受けた彼の悲しき墓は直しても直しても荒らされることとなった。

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