失った権力
週刊誌。それは闇を拾い世間を揺るがす、政界を揺るがす出来事などを世に放つ、全方面に敵を作る冊子だ。それを読んでいると父親の再婚とミツコについて驚きの情報が書かれていた。それはミツコとの不倫をしているという情報だった。政界に推したのは自分の不倫相手だということを有耶無耶にする為だと予想されていた。
この週刊誌のおかげで世間はミツコ、そして父親である菅原を推す人間は少なくなっていった。俺は心の中でほくそ笑んだ。ようやく父親の力が失われていくことに喜びを隠せなかった。
だがその反面、俺はますます政界に進出することの難しさを感じていた。長年離れていた父親の元へ帰ることさえ難しい今、どうするべきか悩んでいると父親とコンビを組んでいた弁護士が俺の目の前に現れた。
「……お久しぶりです」
「菅原くん。政界に進出しないか?」
「……手伝ってくれるとでも?」
「あぁ、今君の父親の失脚、ミツコの失脚で、実は政界内では君の実力が買われている」
「え?」
「ミツコと菅原大臣の不倫によって、実力があるにも関わらず、結局政界に来れなかった人材である君を自民党は欲しがっている」
「……見返す時間がとうとう来たのか」
「あぁ!」
俺は弁護士と手を組んだ。来年の選挙に向けて、着々と準備を進めて行った。無所属の人間として望んだ今回の政界進出、父親は血眼になって阻止しようとしているらしく、それも週刊誌に取り上げられる事になった。
【失脚中の菅原元大臣、実の息子の政界進出に反対?!】
という記事で書かれた週刊誌はあっという間に全国で拡がりを見せた。実力ある息子を政界に出さないのは政界にとっての損失だと世間から大叩きに合うこととなり、父は隠居という形で政界から退くこととなった。
義母も父親との離婚を発表。ミツコは姿をくらました。この記事のおかげで俺は選挙戦を見事に勝ち上がり議席を獲得。そしてその後自民党に拾われ、最高の政界進出となった。
☆☆☆
数年後のこと。俺はとある小料理屋で今後の在り方について語っていた。
「今の首相はダメだ。俺がなる……!!」
「……お手伝いしますよ」
コンビを組んだ弁護士はずっと俺を手助けしてくれていた。最高の気分だった。だがそれを狂わすように俺はハニートラップに引っかかってしまった。
そう、ミツコの差し金によって。
「ねえ、菅原さーん。抱いてよ〜」
「ダメだよ」
「一晩でいいからっ」
「……全く」
俺はとある女に誘われラブホテルに入っていったことを週刊誌に取り上げられ、さらにその後その女は俺に無理矢理やられたと、怪我をしたと警察に届けを出したと言う。
「クソッ!!」
「大丈夫ですよ。私がいますから」
「……誰の仕業だッ!!」
「ふふふ。誰なんですかねえ」
「何笑っている……?」
「いえいえ、助かるのにそんな焦らないで欲しくてですね」
「バカにしているのか」
「いえいえ」
「……まぁいい。頼むぞ」
「はい」
被害届を出した女と対面した際、女は被害届を下げたことを聞かされる。
「え?」
「だからー、被害届取り下げたんだってば」
「……」
「ふふふ、またね〜」
週刊誌に再び取り上げられた事で、俺への世間の信用はダダ下がりの一方だった。ハニートラップに引っかかったことを可哀想だと言う人間と、ハニートラップだとしても女に手を出したのは父親と同じだと叩かれる始末だった。
どんどん力を落とした俺は翌年の選挙戦、自民党から見放され、世間から見放され、最終的に議席を獲得することも出来ずに自民党から追放されることとなった。
「クソ……!!!」
「私はこれで貴方から去ります」
「は……?」
「私はミツコに着きますよ」
「は?」
「貴方はミツコの差し金によって終わったんですよ。私はミツコ元来の能力と美しき政治家という名前で売れるのを楽しみにしてましてね」
「……週刊誌に売ったのは」
「私ですよ!」
父親に裏切られ、弁護士に裏切られ、ハニートラップに引っかかりミツコに全てを奪われた今、俺は生きる意味を失った。政界に戻る実力ももう無い。
路頭に迷った今やるべき事はミツコと弁護士、そしてこの原因を作った女、そして父親を狂わせた女への復讐だけに感じていた。
最高に虚しい人生に最後の祝杯を上げて、俺は翌日から動き始めた。探偵を雇い、義母の今を探った。
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