天へ

 裏の世界。拳銃なんて当たり前に置いている世界線。必ず外に出る時は拳銃をスーツのポケットに隠しながら歩く。今や昔と違い頭を使う仕事が多いと聞いていた。若頭についていきながら色々な仕事を学ぶ。


「おい」

「へい!」


 若頭がタバコを持てばすぐさま火をつける。少しでも遅いと殴られる。少しでもタイミングが早くても殴られる。そうやって仕事を覚えて行った。


 すると組長と対面することができる日が訪れた。裏の世界に入って数年後のことだった。


「おう。お前の探しているやつ見つけたぞ」

「……組長。ありがとうございます」

「片付けてこい」

「え?」

「こいつはうちから金を借りて返さねえからな」

「かしこまりました」


 自分の復讐と組から借りている金の取り立ての為に暮らしているという場所に向かった。ドアを強く殴りながら叫ぶ。


「居るんだろ!!」

「……うるせえな」

「よお。うちの組から借りた金返してもらおうか」

「あ?」

「はよ返さんかいボケェ!!!」

「お前……」

「思い出したかよ」


 俺は裏道にそいつを連れていき、数十発殴りながら金をむしり取る。男は後ろからナイフを構える。


「刺してみろよ」

「うあああ!!!」


 俺はナイフを奪い、そいつの股間を滅多刺しにする。


「アアアアッッッ!!!!」

「こんなクソみてえな股間いらねえよな」

「いてえよおおおお」

「死んじまえボケカスが」


 そして裏道で倒れ込み、いっさい動かなくなった。組から借りていたという300万の取り立て、そして俺自身の復讐を終えた。だがまだ1人目。


 俺は2人目を探しながら仕事をこなしていった。組長からは信頼を置かれ、後輩からも慕われる存在になっていた。


 そして後輩からの一通の電話により、2人目が見つかった。だが既に誰かに殺されているようで自分の手で罰すことが出来なかった。母の仇が取れない。


 3人目を何とか自分の手で罰する為に自らで各地方に飛び回り仕事をして行った。そんな時母から電話がかかる。


「あ、あんた」

「母さん。どうした」

「あんた人殺したんかッ!」

「え?」

「あんたの顔写真出とる!!」

「……母さん」

「私はあんたをそんな子に育てた覚えは無いよ!!」


 母さんはその後ずっと怒りながら泣いて、そして最後には俺との縁を切ると言った。急いで飛行機で地元に帰り、母の家に向かった。元々引っ越す予定だったのか既に人が住んでいる様子はなかった。


 電話もブロックされているのか通じなかった。公衆電話から電話をかけても繋がらない。携帯すら解約されていた。


 俺はなんのために生きていくべきなのか分からなくなっていた。悔しさで3人目を殺してから自分も死のうと決めた。


 組長の元へ行き、指を3本ほど詰めて組を抜けた。


 ☆☆☆


 3年後。東京の田舎に3人目、俺の母を襲った張本人が住んでいると情報を得た俺はその場所に向かっていた。空気の澄んでいる綺麗な田舎だった。

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