殺人
「お前何やってんだああああ!!!」
「うわっ!!」
俺が見た光景は地獄そのもの。複数人の男たちが俺の愛娘を襲う姿だ。全員ズボンとパンツを下ろし、娘を犯していたのだ。俺は後輩から持ってきてもらっていた拳銃を構える。急いでパンツとズボンを上げる男たちを拳銃で脅し、全員を一箇所に集める。
娘の方をちらっと見ると恐怖からなのか、痛みからなのか気絶していたが、娘の下腹部あたりは傷だらけ、そして何よりも女性として大事な部分がボロボロになるまでやられていた。
涙が出たと思いきや怒りからの血が眼から零れる。血涙というものを初めて見た。
「お前ら殺してやる!!!」
俺は拳銃の安全装置を外し、男たち全員を撃ち抜いた。森に響く銃声、痛みで叫びあげる男たち。そして到着した警察の部隊。
「複数人生きている。保護しろ」
「……先輩」
「……おい、手錠」
後輩に手錠を用意させ、俺の腕につける。
「先輩……」
「はよ連れてけや」
「は、はい。その前に娘さんを奥さん所へ」
「……あぁ」
娘が俺の腕元に帰ってきた。が、悲惨な状態で見つかったせいで翌日亡くなったことが確認された。逮捕された男たちは全員が未成年ということもあって、どうすべきか警察内部でもかなり検討されているようだった。
そして俺は初めて逮捕された側の犯人として事情聴取を受けていた。
「先輩……。いや、アンベさん。2人を殺害、そして残りの3人は怪我をさせた。間違いないですね」
「あぁ。手が震えて5人殺せなかったよ」
「……怒りに任せて人を殺したらダメでしょ」
「汚れちまったな。俺は」
「先輩」
翌日のニュースから俺が人を殺したとの報道が全国で流れたようだった。妻は警察内部の人間から聞いた話によると今回の事件は俺の責任では無なく娘を襲った男たちから娘を守ろうとした防衛としてやったことであり、無実を証明したいとの事で署名活動を行っていた。
そして、俺の元に複数人の女性が面会として訪れていた。
「……あなたがたは?」
「あなたが殺した、そしてあなたに怪我をさせられた子達の母親です」
「そうですか」
「この度はすみませんでした」
全員が俺の視界から消えた。どうやら土下座をしたようだった。
「俺が殺したんですよ」
「いえ、元はと言えば愚息たちがあなたの娘様を襲わなければ起こらなかったんです」
「だとしても俺は人殺しです」
「本当に申し訳ございませんでした」
母親たちのすすり泣く声が聴こえる。俺も思わず涙を流してしまっていた。
「こちらこそ、父親である私が人様の子を殺し、怪我をさせるなど、ありえない行為です。申し訳ございませんでした」
面会は終わりを告げた。
そして長い月日が経ち、裁判の結果が出る。
「アンベヤスユキ。殺人及び傷害として無期懲役と処す」
「……はい」
妻の署名活動も世間からの冷たい風によって5名の署名しか集まらず、無効となった。そして俺は牢獄に囚われた。無期懲役犯として。
そして牢獄に入った翌日手紙が来る。両家の父親と母親からだ。
【あなたの妻は亡くなりました。あなたのように娘を亡くした私たちはどうすればいいですか?】
【ヤスユキ。お前は許されない行為をした。だがその行いを償え。お前は自慢の息子だった】
両家で真反対の手紙。妻が亡くなった。
俺は生きる希望も無くなった。
俺は牢獄で妻の両親に手紙を書いて送った。
【申し訳ございません。私の命を持って償います】
そう送り俺は翌日牢内にて、渡された食事についていたフォークで自殺をした。
☆☆☆
「先輩ッッ…… 」
俺の先輩。アンベヤスユキは牢で自殺をした。奥さんと同じ墓に入れるのは嫌だと奥さんの両親は言っていたために、先輩の遺骨は先輩の両親の元へ行った。
「おい、カツマタ。泣くな」
「……はい」
俺は先輩の意志を継ぎ、先輩が捕まる原因となった少年たち5人を少年法に守らせることなく牢獄送りとした。
先輩が喜んでくれるといいな。そう願い。
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