3章

「奥さん、こんなことで呼ばれてもねえ」

「なんだって?!」

「近所トラブルも実害がないんでしょう?」

「何かあってからじゃダメでしょ!」

「そりゃ分かるんですけど、我々も実害とか起きなきゃ注意するくらいしか出来ないんだよ」

「ったく!」


 あの事件が起きてから数日後、つまらん近所トラブルに駆り出されていた。実害が出てはいけないと思い、一応隣の争っている者の家のチャイムを鳴らす。


「どうも、警察のものですけど」

「なんすか……」

「貴方のご自宅、夜音楽がデカいってクレームが入ってましてね?」

「すみません。分かりました。ご忠告感謝します」

「まぁまぁ注意してくださればいいんですよ。実害が起きてからじゃ遅いからね」

「はい」


 20代そこらの若者は眉間に皺を寄せながら家の中に入っていった。さすがにくだらない争いに巻き込まれたおかげか疲れがたまり、一度家に帰っていた。


「ただいま」

「あれ、あなた早いんですね」

「あーいやスグ戻るが、娘の顔を見させてくれや」


 俺が48時に24の当時OLだった娘と結婚した。いわゆる歳の差結婚、ご両親は俺より歳上だったがそう歳は変わらない。反対されていたものの俺の職業が警察だったことで結婚を許された。その数年後子どもができた時は大いに喜んでくれた。


 その子どもも、もう7歳。小学生だ。土曜日ということもあり学校は休みで家で静かに宿題をしていた。邪魔をしては行けないなと思い、少し寂しかったが、仕事に戻ろうと家を出る直前だった。


「ぱぱ!」

「おお〜。宿題は?」

「終わった〜!」

「おぉ、偉いぞ!!」

「えへへ」


 こんなに可愛らしい女の子が自分の娘なんて未だに信じられない。

 頭を撫で回し、俺は仕事に戻った。


 そこから数ヶ月後の事だった。


 ☆☆☆


「おい、親父、お袋、嫁さんと子ども連れて戻ったぞ」

「おぉう。ヤスユキ戻ったんか」

「おう。母さんは?」

「あっちや」


 孫と嫁を親父に任せて、俺はお袋に会う。


「久しぶりに戻ってきたわ」

「あらぁ。ヤスユキ」

「嫁さんと子どもも連れてきてっから」

「あいよ。あんたまた見ないうちに老けたかい?」

「そういう母さんもシワが増えたんじゃねえの?」

「チッ。これだからガキはやだよ」

「母さん。そんな怒ることねえだろ」

「ふんっ!」


 お袋は怒り、どこかに行ってしまった。俺は仕方なく親父の元に戻ると、娘は嬉しそうに親父と遊んでいた。しばらく滞在することに決めていた。


 その晩の事。


「ヤスユキ、あんた明日畑仕事手伝いーな」

「はいはい」

「ぱぱ、畑仕事って?」

「今食べてる野菜とかは全部ばあばとじいじが作ってんだ」

「ばあば、じいじ凄いんだあ!」

「おう!」

「自慢だね!」

「あぁ、ほんと自慢だよ」


 娘は天使のように言葉の使い方が綺麗だった。思わず泣きそうになる。楽しい晩を過ごし、夜娘は親父とお袋と寝るといい寝室を別々にして寝に着いた。


 翌朝のこと畑仕事をしていると夏休みの時期のおかげか子どもたちが元気に走り回っている。


「精が出ますねー!!」

「ありがとう〜」


 そんな時だった。ひとりの少年たちがうちの娘に興味を持ったのか近づいてくる。


「見ない顔だな」

「……」

「無視すんなよ」

「なんじゃ、うちの娘に用があっか?」

「別に。見ねえ顔だと思っただけだ」

「そりゃ、東京から来とるからな」

「なっ、東京?!」

「あぁ。東京だ。ほら挨拶しろ」

「……アンベミユキ」

「俺はタカシだ」

「うん、よろしく」


 娘に新しい友達が出来た。そこから数日間タカシと名乗る少年は娘に会いに来てはうちの周りで遊ぶようになった。次第に打ち解け始めたのか、娘はタカシと遊ぶ時に笑顔を見せた。


「お前笑ったらかわいいな」

「ありがとう……」

「うちの娘ナンパしとるんか」

「ひっ、べ、別にしてねえよ!」

「ふん、どうだか」

「ぱぱ、やめてよっ」

「ははは、わりぃわりい。邪魔もんは消えるよ」


 娘が楽しそうにしている姿が嬉しく、タカシに任せていた。

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